●こんなお話
日本最大のダムを占拠したテロリストと戦う織田裕二さんの話。
●感想
日本最大級の貯水量を誇る奥遠和ダムは、冬の猛吹雪によって外界から隔絶されていた。ダム運転員の富樫輝男は、同僚の吉岡和志とともに遭難者救助に向かうが、視界を奪うホワイトアウトの中で吉岡を失う。吹雪の白の中で仲間を見失った記憶は、富樫の胸に深い傷として残る。
吉岡の婚約者である千晶が慰霊のためにダムを訪れる。その同じ日、宇津木雅彦率いる武装グループが突如ダムと発電所を占拠する。彼らは職員と作業員を拘束し、政府に50億円を要求、24時間以内に応じなければダムを爆破すると通告する。唯一の連絡路は爆破され、猛吹雪のためヘリコプターも近づけず、ダムは完全に孤立する。下流には20万人の住民が暮らしており、決壊すれば町は壊滅する状況に置かれる。
拘束から逃れた富樫は、単独で行動を開始する。ダム内部の通路や機械室、水路構造を熟知していることを武器に、暗い配管スペースや氷点下の屋外を移動しながら武装グループと対峙していく。宇津木は冷静沈着に計画を進めるが、内部では部下同士の不信感が生まれ始める。
富樫は水路を歩いて外部へ脱出し、警察に状況を伝達する。その後、自ら再びダムへ戻る決断を下す。地元警察署長は犯人グループが二手に分かれていることを突き止める。
一方、宇津木は仲間を出し抜いて別ルートから逃走を図る。武装グループに身内を殺されて恨みを持って、内部に潜入していた笠原が追跡するが、反撃を受けて射殺される。宇津木はヘリで脱出しながら爆破を実行しようとするが、富樫はスノーモービルを爆破して雪崩を誘発させ、ヘリを墜落させる。
最終的に富樫は宇津木と対峙し、格闘の末に起爆を阻止する。爆薬は解除され、人質は解放される。猛吹雪の中で孤立していたダムは安全を取り戻し、下流の住民も守られる。富樫は千晶を救い出し、救助隊に保護される。雪原の中で彼は過去と向き合いながら生還しておしまい。
日本版ダイ・ハードという触れ込みで語られることの多い作品ですが、発想自体は非常に魅力的だと感じました。巨大ダムという閉鎖空間、猛吹雪による完全孤立、爆破までのタイムリミットという設定は緊張感を高める要素がそろっています。
序盤、占拠に至るまでの流れは期待感をしっかり積み上げてくれます。孤立無援のダム職員がどうやって武装集団と渡り合うのかという構図は胸が高鳴りました。
ところが実際の攻防になると、肉弾戦で突破したり、極寒の水中でも「山に慣れている」という理由で切り抜けたりと、主人公の耐久力が突出して描かれます。そのあたりはリアリティよりもヒーロー性を優先した演出に感じました。
警察側の描写も、主人公を理解するベテラン署長と現場を把握しきれない上層部という構図が明確で、物語としては整理されていますが、もう一歩踏み込んだ関係性の深化があればより熱量が増したように思います。
犯人側では、良心の揺らぎを見せる人物が配置されているものの、その内面が深掘りされきらないまま展開していく印象も受けました。俳優陣の存在感は十分にあると感じましたが、人物描写にもう少し時間を割いても面白かったのではないかと感じます。
雪山ロケーションのスケール感やダム内部のセットは迫力がありますし、日本映画として大規模アクションに挑んだ意欲は強く伝わります。銃撃戦や爆破演出に独特の質感があり、そこに時代性も感じられます。
全体として、極限状況サスペンスという題材の魅力と、日本映画ならではの演出が交錯する一本でした。設定の壮大さと人物描写のバランスについて考えながら鑑賞すると、また違った味わいが生まれる作品だと思います。
☆☆
鑑賞日:2020/08/11 テレビ東京 2026/02/17 WOWOW
| 監督 | 若松節朗 |
|---|---|
| 脚本協力 | 福田靖 |
| 脚色 | 真保裕一 |
| 長谷川康夫 | |
| 飯田健三郎 | |
| 原作 | 真保裕一 |
| 出演 | 織田裕二 |
|---|---|
| 松嶋菜々子 | |
| 佐藤浩市 | |
| 中村嘉葎雄 | |
| 石黒賢 | |
| 吹越満 | |
| 古尾谷雅人 |


