●こんなお話
霧社事件のときの先住民の話。
●感想
台湾が日本に割譲された時代、深い緑の山々を駆け巡り、自然と共に生きていたセデック族。彼らの文化や暮らしは日本の統治によって否定され、インフラの整備や日本式の教育を強いられ、低賃金労働で苦しい生活を送るようになる。
そんな中、ある結婚式の最中に日本の警官がやってきて殴打事件を起こす。怒りを募らせた若者たちは蜂起を訴えるが、最初はそれを拒む部族の頭目。しかし最終的にはその声に応じ、他の部族にも呼びかけて警官たちを襲撃。そして翌朝、日本人が集まる運動会を奇襲し、多くの命を奪うという悲劇的なクライマックスを迎える。
物語は主人公である頭目の青年時代から始まり、同族との激しい戦い、日本軍との初接触、そして降伏と日本統治下での屈辱的な生活が描かれる。若者たちは再び立ち上がることを訴えるが、日本の圧倒的な軍事力を知る頭目は葛藤し、苦悩の末に決断する。
映像では山々の緑と、そこに印象的に浮かび上がる真っ赤な桜が目を引きます。カメラは縦横無尽に動き、視覚的にも飽きさせない演出がなされていました。戦闘や重要な場面では美しい歌が流れ、先住民族の精神性や世界観を表現しているのも特徴的。
セデック族には成人の儀式として敵の首を狩る文化があり、死とは「虹の橋を渡って祖先の元へ行くこと」という捉え方をしていて。そのため、死を恐れず誇りのために戦う姿が印象的に描かれてます。
同じセデック族の中にも日本人と同化しようとする者がいたり、日本人側にもセデック族を理解しようとする人物が登場するなど、単純な善悪では語れない人間模様も魅力のひとつです。
印象的だったのは、日本人将校として登場した木村祐一の演じる人物。先住民を侮蔑しながらも、最後には「自分も武士の末裔だ」と言ってサーベルで立ち向かう姿に意外性があり、見ごたえがありました。
そして主人公の頭目は、死を覚悟の上で戦いに身を投じる決意をする。狩り場を守るため、そして何よりも自分たちの誇りを取り戻すため。太陽に向かって踊るその姿は、映画の中でもとりわけ美しく、心に強く残りました。
この作品を通じて、現代とは異なる価値観や文化に触れることができ、また、アイデンティティとは何かを考えさせられる貴重な体験が得られました。
☆☆☆☆☆
鑑賞日:2013/04/27 吉祥寺バウスシアター 2024/04/30 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ウェイ・ダーション |
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脚本 | ウェイ・ダーション |
出演 | リン・チンタイ |
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マー・ジーシアン | |
ビビアン・スー | |
ランディ・ウェン | |
安藤政信 | |
ルオ・メイリン | |
河原さぶ | |
木村祐一 | |
春田純一 | |
ダーチン | |
スー・ダー | |
シュー・イーファン | |
ティエン・ジュン | |
リン・ユアンジエ | |
田中千絵 |