映画【座頭市あばれ凧】感想(ネタバレ):新機軸の殺陣が冴える!座頭市がヤクザ抗争に挑む異色の時代劇

The Sword of Zatoichi
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●こんなお話

 座頭市が狙撃されて負傷するけど、通りがかりの人たちに助けられる。その助けてくれた人たちへお礼の挨拶をする旅。

●感想

 物語は、座頭市がお世話になる穏健なヤクザ一家と、対立する強欲なヤクザとの間で繰り広げられる利権争いの構図を軸に展開する。

 座頭市が身を寄せる一家は、川の渡し賃を町民の負担にならないよう安くしたり、花火大会を開いて皆を楽しませたりと、町と共に生きる存在として描かれている。一方、対立するヤクザは役人と結託し、利権をすべて独占しようと画策しており、その横暴さが物語に緊張感を与えていたと思いました。

 今作の魅力の一つは、殺陣の演出の工夫で。水の中で斬りあう場面や、影の中を静かに動き回るシーン、真上からのショットやホラー映画さながらの不穏な演出など、これまでのシリーズとは一線を画す新鮮な映像が印象に残りました。クライマックスでは、座頭市が一気にカタキ役をなぎ倒していく爽快さがあり、シリーズの中でもとくに斬り合いの数が多かった印象でした。

 ただし、キャラクターの個性が少し薄かったのが惜しいと感じて。穏健派のヤクザの息子は、反抗期の若者のように手柄を立てたくて突っ走り、親の心配をよそに勝手な行動を繰り返していきます。それを心配して見守る姉の存在も、丁寧に描かれてはいますが、強い印象を残すには至らなかったです。敵方のどもりのヤクザも、悪役としてはわかりやすいものの、少々小粒で全体的にキャラクターに面白味が足りなかったです。

 さらに、物語の後半で善人たちが次々と殺されていく展開は、陰鬱さが際立ち、少し気分が沈んでしまうほどだったのも事実でした。

 とはいえ、座頭市の活躍をしっかり楽しめる娯楽時代劇としての完成度は高く、テンポのよい展開や迫力あるアクションが最後まで飽きさせない展開で。特に印象的な浪人が登場しなかったのはやや残念でしたが、全体としては満足度の高い一作でした。

☆☆☆

鑑賞日:2014/04/04 DVD

監督池広一夫 
脚色犬塚稔 
原作子母沢寛 
出演勝新太郎 
久保菜穂子 
渚まゆみ 
五味龍太郎 
中村豊 
杉田康 
遠藤辰雄 
香川良介 
左卜全 
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