●こんなお話
一晩だけ人を殺してもいい法律のある近未来のアメリカでいろんな事情で恐怖の街を逃げることになった一行の話。
●感想
年に一晩だけ、すべての犯罪が合法となるという世界で、人々がその夜をどう生き延びようとするのか。そんな異様な社会の中で、それぞれの登場人物が現れてくる。家族を守るために家にこもろうとする者、武装して街に繰り出す者、ただその日をやり過ごそうとする者たちの姿が、次から次へとテンポよく紹介されていく。
そしてやがて、パージの夜がやってくると、街は一気に不穏な空気に包まれる。仮面をつけて大声を上げる集団、武装した男たち、どこか理性を捨てたかのような暴力の連鎖。中でも、火炎放射器やガトリングガンなどで攻撃する悪役たちのビジュアルがとても印象的で、記号的ながらも存在感のあるキャラクターとして立ち上がっていたと思います。
物語の流れとしては、【ウォリアーズ】や【バトルランナー】などに通じるような、ひたすらに夜を生き抜くというサバイバルの構造になっていて、目新しさという点ではやや薄味な印象もありますが、その分、キャラクターたちがどう動くのかを見守る楽しさがありました。中心となるのは、かつての過去を背負ったワケありの男が、出会った家族と行動を共にするうちに、徐々に守る側へと変化していくという展開で、古典的ながらも安定感があります。
ただ、その守られる側となる夫婦と子どもたちにもう少し魅力があれば、より感情移入がしやすかったかもしれません。彼らの背景や葛藤にもう一歩踏み込んでくれたら、物語の厚みも変わってきたように思います。
終盤で、なぜ主人公がこの夜に街へ出たのかという動機が明かされる場面には、静かな感動がありました。描かれている出来事そのものは過酷で、決して優しいものではないのに、どこか人間の情のようなものを感じさせるラストだったと思います。
一方で、物語に登場する富裕層による人間狩りや、反政府組織の活動といった要素がほんの触り程度で流れてしまっていたのは惜しくも感じました。もっとそこに深く入っていく選択肢もあったように思いますし、逆にそぎ落として一晩の逃走劇として突き詰めるのも面白かったのではないかという気もします。
それでもこのシリーズ特有の、現代社会を切り取る視線や、混乱の中で人の本性が浮き彫りになっていく感じはしっかりとあり、設定の力で引っ張っていく一本として十分に見ごたえがあったように思います。
☆☆☆
鑑賞日: 2016/01/06 Blu-ray
監督 | ジェームズ・デモナコ |
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脚本 | ジェームズ・デモナコ |
出演 | フランク・グリロ |
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カーメン・イジョゴ | |
ゾーイ・ソウル | |
ザック・ギルフォード | |
キエレ・サンチェス | |
ジョン・ビーズリー | |
ジャック・コンレイ |