映画【七つの弾丸】感想(ネタバレ):緻密な群像劇と静かな絶望が交差する|銀行強盗事件を追う90分のリアリズム

The-Murderer-Must-Die-(1959)
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●こんなお話

 連続銀行強盗犯の次の犯行計画と警官やタクシー運転手、銀行員が事件に向かっていく話。

●感想

 物語は、ひとりの男が銀行の前を下見している場面から始まります。ナレーションによって、この男が銀行強盗を計画しており、過去にも複数の連続強盗事件を起こしていることが説明されます。

 同時に描かれていくのは、まったく関係のない人々の日常。銀行で働く男性には婚約者と母親がいて、平穏な生活を送っている。また、タクシー運転手として働く男は、恋人との関係や金銭的な悩みを抱えています。さらに、銀行前の交番で勤務する警察官は、昇進試験を目指して日々努力している様子が描かれます。

 この作品では時間軸が頻繁に前後しながら、銀行強盗犯がどのようにして拳銃を手に入れ、銀行を襲撃するまでに至ったのかを丁寧に描き出しています。その構成が非常に巧みで、観ていて引き込まれました。

 登場人物たちの物語が淡々と、そして客観的に描かれていくため、感情を押し付けられるような演出が少なく、個人的には好みに合っていました。過度に感情的にせず、事件の流れを静かに見つめるようなトーンが印象的でした。

 ただし、群像劇という形式に加えて時間軸が前後するため、誰が主人公なのか、どの人物に感情を重ねて観ればよいのか、最初はやや戸惑うかもしれません。集中して観ることが求められる構成なので、ぼんやりと見てしまうと、登場人物たちの関係性や背景を見失いやすくなると感じました。

 とはいえ、真夏の暑さが画面越しにも伝わってくるような映像の熱量とリアリティがあって、90分間しっかり集中して鑑賞できる1本でした。

 終盤では、銀行強盗犯に命を奪われた人々の遺族たちのその後が描かれます。家族を失い、貧困に陥ってしまった子どもたちの姿で物語は締めくくられ、非常にやるせない気持ちになります。犯人が死刑になったとしても、失った家族は戻らないという現実を突きつけられるラストは、重く静かな余韻を残しました。

 人間ドラマと社会の理不尽さを淡々と描きつつ、心の奥に深く刺さる作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2022/09/25 U-NEXT

監督村山新治 
脚本橋本忍 
出演三國連太郎 
今井俊二 
村瀬幸子 
高原駿雄 
能沢佳子 
伊藤雄之助 
菅井きん 
星美智子 
久保菜穂子 
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