映画【マトリックス】感想(ネタバレ):スローモーションと黒いコートの世界、唯一無二の映像体験

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●こんなお話

 コンピュータに支配された世界でハッカーの主人公が救世主となり自分を信じて目覚める話。

●感想

 緑がかった色調の映像と、サングラスに黒のロングコート姿で銃を構える人物たち。そのビジュアルだけで強く印象に残る作品でした。ワイヤーアクションを取り入れたカンフーの動き、二挺拳銃による銃撃戦、そして映像表現の新しさが視覚的な魅力として際立っていて、物語の中に入り込む以前にまず画面のかっこよさで惹きつけられる映画です。仮想現実と人工知能、そして人間の自由意志をめぐる戦いが描かれたSF作品として、世界観の作り込みも見応えがありました。

 物語は、眠れない日々を送る主人公が、自分の生活にどこか違和感を抱いているところから始まります。とある電話をきっかけに、黒服の男たちに追われることになり、そこから主人公は「真実を知りたいか」と問われることで、現実世界の存在を知っていく流れになります。ここで初めて明かされるのが、人類がマシンに支配されていて、仮想現実の中で生きているという設定で、観客にとっても物語の前提が明らかになる重要な展開となっていました。

 現実世界に目覚めた主人公が、寒くて無機質なリアルワールドに触れる過程では、食べ物の味がなかったり、娯楽も存在しないという人間の厳しい現実が描かれていきます。そこから人工知能と戦うための訓練が始まり、仮想空間でのカンフーや銃撃戦のトレーニングなど、アクションへの導線がしっかりと描かれていくのも魅力的でした。

 中盤では、預言者に会うために仮想空間へ戻る主人公が、裏切りに遭って仲間を人質にされてしまい、彼らを助けにいくという展開へ。ここから先は、一転してアクションの連続となり、ビルからビルへ飛び移る場面や、高速で銃弾を避けるスローモーションの表現が多用されていきます。ストーリーの構成としても、1幕目は現実と仮想の関係性を描き、2幕目では世界のルールや設定を観客に説明し、3幕目から一気に物語の核へと迫っていく王道の構成になっていました。

 ただ、1幕目から2幕目の中盤あたりまでは、登場する専門用語の数も多く、主人公が「それは何?」と尋ねて、周囲の人物が解説するという展開が繰り返されていくため、人によってはやや間延びして感じる部分もあるかもしれません。親切ではあるのですが、その流れが続くことで、少し笑ってしまいそうになる瞬間もありました。

 クライマックスでは、エージェント・スミスに倒されてしまった主人公が、恋人のキスによって覚醒するという展開に。その復活の仕方も昔ながらの映画を彷彿とさせるようで、個人的にはやや安直に思えてしまいました。ただ、その後に見せる覚醒状態の戦いぶりや、スミスとの一騎打ちは映像的には迫力があり、爆発的に広がる演出も印象的な場面だったと思います。

 スミスの最期も、ぐにゃりと崩れて爆発していくというユニークなもので、もっと他に方法があっても良かったのではとも思いましたが、それもまたこの作品らしさなのかもしれません。何より、全編を通してロングコートをなびかせながら戦う人物たちの姿がかっこよく、スタイリッシュな映像が次々と繰り出されるのは、観ていて気持ちよかったです。

 スローモーションを駆使して銃弾を避けるという映像表現は、当時としては非常に革新的なもので、これを目にした観客に強いインパクトを残したのも納得できます。アクションとスタイルを両立させた映画として、記憶に残る一本でした。

☆☆☆☆

鑑賞日: 2014/01/22 Hulu 2021/12/12 NETFLIX

監督アンディ・ウォシャウスキー 
ラリー・ウォシャウスキー 
脚本アンディ・ウォシャウスキー 
ラリー・ウォシャウスキー 
出演キアヌ・リーヴス 
ローレンス・フィッシュバーン 
キャリー・アン・モス 
ヒューゴ・ウィーヴィング 
グロリア・フォスター 
ジョー・パントリアーノ 
マーカス・チョン 
ポール・ゴダード 
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