映画【テッド】感想(ネタバレ):テディベアと過ごす大人の青春、笑って泣ける友情の物語

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●こんなお話

 しゃべる人形とおじさんのバディものの話。

●感想

 幼いころに誕生日プレゼントとして受け取ったテディベア。少年はそのぬいぐるみを大切にし、流れ星に願いごとをする。翌朝、目覚めると、なんとそのクマに命が宿っていた。それ以降、テディベアと少年は親友としてずっと一緒に過ごしていく。子ども時代を共有し、思春期も寄り添い、大人になっても変わらぬ関係を続けていた。

 やがて彼は社会人となり、テディベアも外見はそのままながら、中身はすっかり中年のような振る舞いをするようになっていた。見た目は愛らしいが、口を開けば下ネタのオンパレード。それでも、どこか憎めないキャラクターで、そのギャップこそがこの作品の魅力のひとつになっていたように思います。

 特に面白さを感じたのは、序盤の導入部分で描かれる主人公の職場の様子や、彼女の職場の人間関係でした。主人公はレンタカー会社で働いており、上司や同僚たちとのやりとりも軽妙で、日常の空気感がよく出ていたと思います。一方、彼女の職場には親の影響でポジションについていることを自覚している上司がいて、そうした背景もさりげなく描かれています。そうした登場人物たちを通して、主人公が「このままでいいのか」「彼女とこの先をどうするか」と悩む姿に説得力がありました。

 彼女との未来を考える中で、主人公はテディとの別れを決意します。テディもその気持ちに応えようと、自ら職探しを始めるのですが、その展開がまたユーモラスで、笑わせてくれる場面が続きました。どの基準で採用が決まるのか首をかしげたくなるような面接シーンの連続には、素直に笑ってしまいました。

 テディは自分が楽しいと感じることを主人公にも共有したくなり、再びふたりは一緒に過ごすようになります。それが原因で、主人公は彼女との約束をすっぽかしてしまい、信頼を失ってしまいます。テディに悪気はないのですが、結果的に彼女を傷つけてしまう。それぞれが相手のことを思っていながらも、すれ違ってしまう気持ちの描写が丁寧で、観ていて心が動かされる部分でもありました。

 終盤にかけては、主人公が憧れていたフラッシュ・ゴードンと会えるというイベントが発生します。その出来事をきっかけに、主人公は彼女との関係をよりこじらせてしまいます。この展開については、彼自身がテディを責める流れになっていくのですが、そもそも本人も大喜びしていた場面が描かれていたため、「それで責任を押しつけてしまってよいのか?」という思いもありました。彼女との関係悪化のきっかけとして描くのであれば、もう少し誤解が強調されるような演出があってもよかったかもしれません。

 また、ノラ・ジョーンズのライブのくだりについても、少し唐突さを感じました。彼女の心情が変化する契機として位置づけられていたのかもしれませんが、物語の前後で劇的に状況が動くわけでもなく、そのエピソードの必要性にはやや疑問が残る印象を受けました。テディが素直に彼女へ謝り、「彼には君が必要なんだ」と語る場面だけでも充分に物語の軸は伝わるように思います。

 ほかにも、ところどころ笑いのツボが掴みづらい場面もありました。たとえば彼女が初登場するキッチンでの、スキーに関する会話などは、言葉の意味を拾いづらく、苦笑いで終わってしまった部分もあったかもしれません。

 とはいえ、全体としては、子ども時代の夢が現実になったらどうなるかというファンタジーをベースにしながらも、大人になることの寂しさや、誰かと生きていくことの難しさと温かさを描いた作品だったと思います。友情と恋愛、どちらもかけがえのないものとして描かれており、コミカルで軽快なテンポのなかに、ふと立ち止まりたくなるような感情の揺れが潜んでいました。下品な表現も多く見られましたが、それもまたキャラクターたちの一部として愛されている要素のひとつなのかもしれません。

 何より、アメリカ人は本当にウンチやオナラの話でここまで笑えるんだなと、あらためて驚かされる部分も多く、笑いの文化の違いを感じつつも、最後まで楽しく鑑賞することができました。

☆☆☆

鑑賞日: 2013/06/10 TOHOシネマズ南大沢  2015/09/01 Blu-ray

監督セス・マクファーレン 
脚本セス・マクファーレン 
アレック・サルキン 
ウェルスリー・ワイルド 
出演マーク・ウォールバーグ 
ミラ・クニス 
マット・ウォルシュ 
ジェシカ・バース 
ジョバンニ・リビシ 
ジョエル・マクヘイル 
ノラ・ジョーンズ 
サム・ジョーンズ 
トム・スケリット 
パトリック・ウォーバートン 
ライアン・レイノルズ 
セス・マクファーレン 
パトリック・スチュアート 
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