●こんなお話
列車爆破テロが起こって、その犠牲者の1人の8分前の意識の中に飛ばせるマシンに乗り込んでいた主人公が、何度も事件の8分前に飛んで何とか犯人を捕まえようとする話
●感想
謎の機械の中に閉じ込められた主人公が、何度も事故に巻き込まれては亡くなり、別人の姿になって同じ状況を繰り返すという設定だけでも十分に惹き込まれる映画でした。毎回数分間のループの中でわずかな情報を集めて、列車爆破の犯人を突き止めようとするというタイムループ×サスペンスの構成が独特で、先が読めない展開に引き込まれていきます。映像も綺麗で、列車の車内や乗客たちの動き、外の風景の描写なども印象的でした。
ただ、設定に対する説明がかなり少なく、主人公がどうしてその状況にいるのか、なぜ意識だけが過去の誰かの体に転送されるのか、その仕組みについては一切明かされないまま話が進んでいく印象が強く。しかも主人公自身も、最初は戸惑っていたのに、わりとあっさり受け入れて捜査を始めるのが少し不自然に感じたりも。
捜査と言っても、実際には怪しい人物を見つけては暴力的に接していくばかりで、冷静な推理や証拠集めのような過程がほとんどなかったり。疑わしいやつはとりあえず殴る、という姿勢が終始続くのはちょっと荒っぽすぎると感じてしまいました。
さらに、任務を命じる側の技術者たちも説明責任を果たそうとせず、「爆弾を見つけろ」の一点張り。人権もプライバシーも完全に無視された状況に追い込まれる主人公を見ていると、ミッションそのものに疑問を抱きたくなる場面も多かったです。
肝心の犯人についても、「おお、そうだったのか!」と驚かせてくれるような展開ではなく、小物感たっぷりでインパクトが弱かったのが惜しいと感じたり。せっかく緻密に構築されたループの緊張感があるのに、終着点があまりにあっさりしていて肩透かしでした。
その後、事件解決後に「ヒロインを救いたい」と願う主人公の行動は感情的には理解できるものの、タイムパラドックスの扱いが雑で、結局どの世界線が正しいのか、主人公が借りていた体の本来の持ち主(教師)はどうなったのかが曖昧なまま終わってしまいます。結果として、観終わった後にいろいろ考えてしまってモヤモヤが残りました。
ラスト直前の「完璧な一日」を描くストップモーションの演出は本当に美しかっただけに、その後のエピローグで急に現実に引き戻されてしまうような感覚が残念。綺麗な余韻で終わるかと思いきや、「結局どういう理屈でそうなったの?」と疑問ばかりが頭に残るエンディングだったのが惜しいところです。
全体としては斬新な設定や映像表現に惹かれながらも、説明不足や終盤の詰めの甘さで評価が分かれそうな作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2014/11/30 Blu-ray
監督 | ダンカン・ジョーンズ |
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脚本 | ベン・リプリー |
出演 | ジェイク・ギレンホール |
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ミシェル・モナハン | |
ベラ・ファーミガ | |
ジェフリー・ライト | |
キャス・アンヴァー | |
ラッセル・ピーターズ | |
マイケル・アーデン | |
スコット・バクラ |