●こんなお話
女郎屋で働く女性を見受けしようとする座頭市が地元のヤクザと揉める話。
●感想
橋を渡っていた座頭市は、老婆から「気をつけて渡りなさい」と声をかけられる。気遣ってお金を渡そうとした瞬間、その老婆が誤って川に転落するという出だしでスタート。
老婆との短い会話から、彼女がある女郎の身請けをしようとしていたことを知った座頭市は、自らその思いを引き継ぎ、女郎屋へ向かい相手を探し出す。そのために必要な金を稼ごうと賭場へ赴くが、当然ながらヤクザとのトラブルに巻き込まれてしまう。
やがて女郎の身請けに成功し、彼女と共に静かな生活を始めるが、港のヤクザたちが漁民から船を奪い暴力をふるい、子どもまで犠牲となる。その子どもの姉である14歳の少女も女郎として働いており、深い悲しみに打ちひしがれる。
一方、座頭市が身請けした女性には想いを寄せる男性がいた。その男はヤクザに脅され、座頭市を襲うよう命じられる。二人が馬を駆っているところを狙って一団が襲撃するも、返り討ちに遭い、最強と呼ばれた用心棒さえも命を落とす。だが、座頭市もまた重傷を負う。
やがて女性が捕らえられ、座頭市は彼女を助けようとヤクザと交渉に臨む。仕込み杖が使えないよう、両腕を突き刺されるという過酷な仕打ちを受けるも、いったんは家に戻ることを許される。そして夜が明けた頃、ヤクザたちが座頭市の家を襲撃してくる。腕をぐるぐる巻きにして仕込み杖を固定し、座頭市は満身創痍の中で壮絶な立ち回りを見せ、次々と敵を斬り倒していく。ついにヤクザのボスを打ち倒し、港町を静かに後にしていく。
本作は、オープニングから印象的でした。無音のクレジットに始まり、橋を渡る座頭市を下から映すショット。さらには、老婆の突然の落下という衝撃の展開など、従来のシリーズとは異なる構成が新鮮でした。
何か越しに登場人物を映す演出や、土砂降りの雨の中で繰り広げられる殺陣など、映像面でも見どころが多いと思いました。特に、今までにない挑戦的な画作りが楽しめました。
加えて、濡れ場も多く描かれており、漁村の男に無理やり射精させるような過激なシーンや、座頭市自身の濡れ場なども印象的。
クライマックスの、両腕が使えない中で仕込み杖を無理やり巻きつけて戦う立ち回りは斬新。ただし、殺陣のカットが細かすぎて、勝新太郎の本来の身体表現が見えづらかった点は惜しかったです。それでも全体としては、シリーズの中でも異色の構成と新鮮な演出が光る、充実した1作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2023/10/14 U-NEXT
監督 | 勝新太郎 |
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脚本 | 犬塚稔 |
原作 | 子母沢寛 |
出演 | 勝新太郎 |
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太地喜和子 | |
吉沢京子 | |
高城丈二 | |
春川ますみ | |
青山良彦 | |
大滝秀治 | |
小池朝雄 | |
藤岡重慶 | |
松山照夫 | |
田島和子 | |
小海秦寛 | |
伏見直江 | |
中村賀津雄 |