映画【日本暴力列島 京阪神殺しの軍団】感想(ネタバレ):大阪を舞台に始まる実録ヤクザ映画

Nihon bôryôku rettô: Keihanshin koroshi no gundan
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●こんなお話

 上部組織の先兵となったヤクザ集団が、全国で抗争を繰り返し、最後は組織の論理に切り捨てられる話。

詳細ネタバレあらすじ

 昭和27年、大阪。暴力団・庄司組の客分である花木勇は、数人の仲間を従えて活動していた。ある抗争事件をきっかけに、花木は金光幸司と知り合う。金光は花木はの二人は兄弟分となる。

 大組織の天誠会と日新連合会が勢力を争っていた。大阪・今池を縄張りとする日新連合会系の仁田組と花木たちの間で事件が起こる。日新連合会会長の国友利三郎は、この事件を理由に庄司組へ圧力をかけ、庄司組を日新連合会に加盟させる。

 花木は庄司組が日新連合会に加盟することに反対し、庄司組を離れる。その後、花木は仲間たちとともに庄司組を襲撃し、組長の庄司鶴吉を殺害する。花木は自首し、金光が花木の留守を守ることになる。

 3年後、花木は出所する。その頃、仁田組を後ろ盾とする新興組織・桜会が花木たちの縄張りに進出していた。花木は喫茶店で働く石沢ケイコと知り合う。その後、花木は桜会の男たちに待ち伏せされる。ケイコも桜会の男たちに襲われる。花木とケイコはその後、関係を持つようになる。

 昭和30年5月、天誠会系の大槻組組長・大槻正道は花木を自分の舎弟分とする。花木は大槻のもとに入り、天誠会の勢力下で活動することになる。

 花木と金光たちは桜会との抗争を続ける。複数回の衝突を経て、花木たちは桜会を壊滅させる。昭和31年3月、花木は天誠会会長から盃を受け、天誠会直系の若衆となる。

 天誠会は全国への勢力拡大を進め、花木たちを各地へ送り込む。花木たちは上部組織の意向を受けて活動し、他の組織との抗争にも加わる。

 昭和32年、花木、金光、松原らは山陰・城崎へ向かう。花木たちは三田一家の縄張りで活動を始め、城崎をめぐる抗争に加わる。城崎での抗争中、ケイコが事件に巻き込まれて死亡する。その後、花木たちは城崎を制圧する。さらに活動範囲を広げ、奈良、和歌山、北海道へ進出する。

 昭和35年、花木は岐阜・柳ヶ瀬へ進出し、「花木商事」の看板を掲げる。花木は以前、大槻から、柳ヶ瀬を手に入れた場合には自分に任せるという約束を受けていた。

 岐阜を縄張りとする風間会は、日新連合会会長の国友に協力を求める。天誠会も多数の組員を岐阜へ送り込み、岐阜をめぐる対立は大きくなる。岐阜県警も事態に対応する。

 その後、大槻、風間会の風間、日新連合会の国友による三者会談が行われる。大垣を花木組に譲ることで話がまとまり、天誠会は岐阜から手を引くことになる。

 しかし、花木と金光はこの取り決めに従わず、抗争を続ける。天誠会の大槻は、金光を殺害するため殺し屋を派遣する。金光は襲撃を受け、殺害される。

 その後、花木のもとへ、大槻の次の指令を伝えるため松原がやって来る。花木は松原を刺し殺す。

 松原を殺害した花木は、天誠会から破門される。全国へ進出する天誠会の先兵として活動してきた花木は、「最初から破門されていたのであった」でおしまい。

●感想

 大阪で活動していた花木たちは、天誠会という大きな組織の勢力下に入り、城崎、奈良、和歌山、北海道、そして岐阜へと進出していきます。自分たちの縄張りを守るだけではなく、上部組織の勢力拡大のために各地へ送り込まれ、そこで抗争を繰り返すという構図が印象に残りました。

 花木たちは各地で相手組織と衝突し、相手を倒して縄張りを広げていきます。しかし、その一方で相手側からの報復も受けます。勢力を広げるために暴れ続けてきた男たちが、今度は組織の規模が大きくなるにつれて、単純に暴れるだけでは済まなくなっていくところが興味深かったです。

 小さな集団だった頃は、自分たちの判断で相手組織に乗り込み、抗争を起こすことができます。しかし、大きな組織の一員になると、上部組織の決定に従わなければならなくなります。自分たちが勢力を広げるために行動してきた結果、今度は組織の論理のなかで動かなければならなくなる。この変化が本作の重要な部分だったように感じました。

 花木たちは上部組織のために各地で活動し、危険な仕事も引き受けます。しかし、組織が大きくなるにつれて、現場で暴れてきた男たちの判断よりも、組織全体の都合が優先されるようになります。そこで「耐えがたきを耐える」ことを求められる展開には、ヤクザ組織の中で立場が変化していく様子が表れていました。

 花木と金光が兄弟分として活動していく部分も、本作の中心になっています。二人は大阪で知り合い、その後は一緒に各地へ進出します。花木が服役している間には金光が仲間をまとめ、花木が出所した後も二人は行動をともにします。

 一方で、花木の相手役となる石沢ケイコとの関係については、少し分かりにくく感じました。二人の関係が深まっていく過程は、それほど多く描かれていないように感じます。ケイコは途中で桜会の男たちから襲われるという非常に強烈な出来事に巻き込まれます。その後、花木とケイコは関係を持つようになりますが、二人が互いにどのような関係になっていったのかを示すエピソードは、もう少し欲しかったです。

 そのため、ケイコが花木の子供を身ごもり、城崎での抗争に巻き込まれて死亡する展開は、出来事そのものの大きさに対して、二人の関係を描く時間が少なかったように思いました。花木にとってケイコがどのような存在だったのかを、もう少し具体的な場面で見せていれば、その後の出来事も違った印象になったかもしれません。

 映像表現では、梅宮辰夫さん演じる人物が最後に襲撃される場面が印象に残りました。河原には白い布が数多く干されており、その場所で人物が襲撃を受けます。白い布が並ぶ場所に血が広がるという画面は、それまでの実録ヤクザ映画とは少し違った印象を受けました。

 実録ヤクザ映画は、事件を荒々しく描き、人物たちが次々に抗争を繰り返していく作品が多いですが、この場面では背景の白い布を使った画面づくりが強く印象に残ります。暴力的な場面でありながら、ロケーションを利用した映像表現によって、それまでとは異なる見せ方になっていました。

 ただ、物語の最後には少し物足りなさも感じました。長い間、花木たちは上部組織のために各地で暴れ続け、組織の勢力拡大に貢献してきます。しかし、最後は上部組織からの使いである松原を花木が刺し殺し、その直後に天誠会から破門されるという流れになります。

 それまで全国各地で抗争を繰り返してきたことを考えると、最後にはもう少し大きな出来事が起こるのかと思いました。しかし、物語は花木が松原を殺害し、組織から破門されて姿を消すという形で終わります。

 そのため、最後に大きなカタルシスがある作品というよりも、上部組織のために各地で活動してきた男たちが、最終的には組織の論理によって切り離されるまでを描いた作品として見るほうが分かりやすいと思います。

 花木たちは自分たちの力で勢力を広げ、全国各地へ進出します。しかし、組織が大きくなるにつれて、個人の力だけでは動けなくなります。暴れることで組織に貢献してきた人物が、最後にはその組織の決定によって破門されるという流れは、本作の特徴になっています。

 全国各地を舞台にした抗争が次々と描かれるため、実録ヤクザ映画としての勢いはあります。その一方で、人物関係の描き方や物語の終盤については、もう少し掘り下げがあってもよかったと感じました。

 それでも、単純にヤクザ同士の抗争を描くだけではなく、小さな集団が巨大組織の一部となり、全国へ進出していく過程を追えるところは面白かったです。暴れることによって勢力を広げてきた男たちが、組織が巨大化するにつれて組織の決定に従わなければならなくなる。その変化を描いた実録ヤクザ映画として印象に残る作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2026/09/05 U-NEXT

監督山下耕作 
脚本松本功 
野波静雄 
出演小林旭 
梅宮辰夫 
伊吹吾郎 
根岸一正 
西田良 
小泉洋子 
中島ゆたか 
衣麻遼子 
遠藤太津朗 
鈴木康弘 
木谷邦臣 
金子信雄 
安部徹 
今井健二 
高並功 
小松方正 
沢美鶴 
室田日出男 
阿波地大輔 
野口貴史 
北村英三 
大木晤郎 
天津敏 
秋山勝俊 
名和宏 
志賀勝 
三上真一郎 
汐路章 
小林千枝 
成田三樹夫 
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