●こんなお話
味方からテロ事件の容疑者とされてしまって頑張るトム・クルーズたちの話。
●感想
冒頭から高層ビルを飛び降りるアクションが繰り広げられ、主人公の目に装着されたコンタクト型カメラなど、スパイ映画らしいガジェットが次々と登場していく。まるでお約束のような展開ではあるけれど、その発想の豊かさと見せ方の妙で、つかみはしっかり決まっていたと思います。
主人公イーサン・ハントが登場するのは、なぜかロシアの刑務所。厳重な警備のなかでの脱出劇から始まり、物語はいつの間にか国際的な陰謀へと舵を切っていく。チームでクレムリンに潜入し、ある重要な資料を盗み出すミッションに挑むが、当然のように失敗。爆破による大混乱とともに、イーサンたちは濡れ衣を着せられ、政府からも見放された状態で独自に任務を遂行していく。
そして、物語の核となるのは核戦争を起こそうとするロシアの過激派科学者の陰謀。その計画を阻止すべく、チームは世界を飛び回る。舞台はインド、ロシア、ドバイと移り変わり、なかでもドバイの高層ビルでのクライミングや砂嵐のなかでのカーチェイスなど、ひとつひとつのアクションシーンが丁寧に作られていて、その密度に驚かされます。
序盤に描かれたとあるスパイの死や、新しく加わった分析官の背景、刑務所での描写など、単なる見せ場かと思われたシーンが後半でしっかり伏線として活かされていく構成が巧みで、物語の流れに自然な厚みを与えていた。小さなエピソードが後に意味を持ち始めるような演出は、観ていて気持ちの良いもので、作品全体の印象も引き締まっていたように感じる。
その一方で、登場人物の数が多く、動機や関係性が整理しきれないまま次の展開に進んでしまう部分もあった。特に敵側の科学者のキャラクターが地味なこともあり、顔を覚える前に戦いが始まってしまった印象が残ります。敵組織の規模や目的もぼんやりしていて、何と戦っているのかが最後まで輪郭を結ばなかったと感じたり。
また、敵か味方か不明なロシアの諜報員が主人公たちを追いかけてくきますが、その存在が物語にどう関わっていたのかが少し曖昧で、ただ行動を妨害しているようにも見えてしまいました。ただ、そんな不明瞭な敵対関係のなかでも、科学者が立体駐車場で繰り広げる肉弾戦では、設定を越えてしまうような強さを見せてくれて、そこだけ妙に印象に残りました。
全体を通して、スパイ映画としての定番を押さえながらも、アクションと展開のテンポの良さで飽きることなく楽しませてくれる作品だったと思います。特にドバイの場面は、映画館で観るためのアクションという点で非常に満足度が高く、合間に挟まれる軽妙なユーモアも心地よく効いていました。人物関係にやや混乱する部分はあったものの、それでもスパイ映画の醍醐味をたっぷり味わえる一本だったと感じました。
☆☆☆☆
鑑賞日:2012/09/14 Blu-ray 2018/06/30 Amazonプライム・ビデオ 2025/05/20 WOWOW
監督 | ブラッド・バード |
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脚本 | ジョシュ・アッペルバウム |
アンドレ・ネメック | |
クリストファー・マッカリー | |
原作 | ブルース・ゲラー |
製作 | J・J・エイブラムス |
出演 | トム・クルーズ |
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ジェレミー・レナー | |
ポーラ・パットン | |
サイモン・ペッグ | |
ジョシュ・ホロウェイ | |
ヴィング・レイムス | |
レア・セドゥー | |
トム・ウィルキンソン | |
ミカエル・ニクヴィスト | |
ウラジミール・マシコフ |