映画【黒い十人の女】感想(ネタバレ)

Kuroi jûnin no onna
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●こんなお話

 黒い十人の女と1人の男の話。

●感想

 冒頭、暗闇の中を路地を歩く女を追いかける女、女、女。いろんな場所から姿を現してぞろぞろとついていく。そして幽霊まで登場して10人の女たち。1人の女性を問い詰める。
 時間が戻ってテレビ局で働く風というプロデューサーは奥さんと9人の愛人がいるというモテモテ男。始まりもなく終わりもない仕事を続けて、どこに向かうかもわからず自己疎外の状態にある現代人の姿をテレビ業界を通して描いていきます。

 市川崑監督らしい映像美、登場人物や物の画面構図だったり照明の使い方。そして何と言っても軽妙な台詞のやりとり、愛憎劇であり喜劇でありスリラーである物語。

 映画を見ていて何故主人公の男がモテるのか? それを妻や愛人から女性側からの視点で主人公を浮かび上がらせていく手法。
 何といっても台詞が素晴らしくて印象的なものが多くて最高でした。
 「誰にでも優しいってことは誰にも優しくないってことよ」という妻と愛人のやりとりで、モテモテの愛人を持っている夫の事をどう思っているのか、妻の夫への気持ちが浮かび上がったり。序盤は愛人たちの紹介が続いていきます。

 女性から求婚されてものらりくらりとかわす主人公。「物事を真剣に考えちゃダメだよ。忙しい世の中でそんなことをしていたら体が参っちゃうよ」なんてことを愛人に言っちゃったりする男。
 奥さんから「10人もの女性と関係を持つなんて」と言われると「何で10人なの? 40人は親しくしているよ?」。仕事でも上司に叱られようが部下に反抗されようがどこ吹く風。主人公の名前が風、というのも関係あると思います。

 やがて女性たちからの殺害計画があることをしり、奥さんに射殺される主人公。けれどそれは芝居だというのがその前に説明されます。このとき実弾にするか空砲にするかのサスペンスが挿入されますが、これはイマイチ盛り上がらなかったです。

 そこから偽装殺人が他の愛人たちにバレたあとどうなるのか?
 仕事を失い呆然自失の主人公。愛人に「ボクは被害者だ。社会機構に殺されたんだ」と訴える。すると愛人は「社会機構を殺すわけにはいかないでしょ。人間が殺すことができるのは人間とその他の動物だけよ」

 愛人はサヨナラパーティで劇団仲間や奥さんに見送られながら車で去っていく。
 果たして主人公は救われたのだろうか? そんなことを考えながら見終える100分間でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2014/02/26 Hulu

監督市川崑 
脚本和田夏十 
出演岸恵子 
山本富士子 
宮城まり子 
中村玉緒 
岸田今日子 
宇野良子 
村井千恵子 
有明マスミ 
紺野ユカ 
倉田マユミ 
森山加代子 
船越英二 
永井智雄 
大辻伺郎 
伊丹十三

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