映画【キリエのうた】感想(ネタバレ):時空を超えて紡がれる音楽と記憶の物語

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●こんなお話

 路上ミュージシャンが高校時代の知り合いと出会って過去何があったのかと現在で音楽活動していく話。

●感想

 雪景色の中で女子高生たちがオフコースの「さよなら」を歌っているシーンから始まります。2011年、北海道のある学校に“全く喋らない少女”がいて、彼女を気にかける優しい先生がいました。

 現代パートでは、路上ミュージシャンとして歌う主人公の前に、イッコという派手な髪色の女性が現れ、彼女の歌の才能を見抜いてマネージャーになることを提案します。やがて、二人が過去に知り合いだったことも明らかになります。

 物語は2008年の帯広へと時間軸を移します。イッコは大学進学を諦めていましたが、スナックのママである母親が常連客からプロポーズされ、進学資金の援助を受けることになり大学進学を目指すことに。家庭教師に勉強を教えてもらい、さらにその妹とも友人関係を築いていきます。イッコは上京の際、思い出のギターを家庭教師に託します。

 2018年、喋らない少女を保護したことから、彼女の過去を辿るストーリーが始まります。彼女の姉・キリエと婚約していたのが、かつての家庭教師・夏彦であることが判明。キリエは高校生の頃に妊娠しており、東日本大震災で亡くなっていたという衝撃的な事実が語られます。少女はその後、保健所に引き取られてしまいます。

 現代では、主人公の音楽活動が話題となり、多くの人が集まってきますが、イッコの過去も明らかになります。彼女は複数の男性を騙していた結婚詐欺師だったのです。裏切られた男から襲われそうになったり、主人公が再び路上生活に戻るなど、波乱の展開。

 やがてイッコが再登場し、主人公は夏彦と再会。保健所に連れて行かれて以来の再会となります。ギターの師匠として、夏彦と共にフェスの開催を目指す展開へ。新宿でのゲリラフェスでは警察と揉めたり、イッコが男に刺されておしまい。

 本作は3時間という長尺で、時間軸が頻繁に行き来し、一人二役のキャストも登場するため、物語に没入するのが難しい部分もありました。特にイッコというキャラクターが、高校生から東京で結婚詐欺師になっていた背景がやや説明不足で、理解しにくかった印象です。

 教師が子どもの頃の主人公を保護し、義理の兄となる夏彦と出会い、保健所で引き離されるまでの展開が物語の軸となっていますが、果たしてそこまで描く必要があったのか…という点で少し考えさせられました。

 また、主人公の歌唱シーンは印象的ですが、物語上「どうして彼女の歌にこれほどまでに人々が惹きつけられるのか」という説得力がやや薄く、演出が過剰に感じてしまうことも。全体として、良質な映像美と意欲的なストーリー構成がある一方で、やや冗長で集中が続かない部分もあった作品でした。

☆☆

鑑賞日:2025/01/12 DVD

監督岩井俊二 
脚本岩井俊二 
原作岩井俊二 
出演アイナ・ジ・エンド 
松村北斗 
黒木華 
広瀬すず 
村上虹郎 
松浦祐也 
笠原秀幸 
粗品(霜降り明星)
矢山花 
七尾旅人 
ロバート キャンベル 
大塚愛 
安藤裕子 
鈴木慶一 
水越けいこ 
江口洋介 
吉瀬美智子 
樋口真嗣 
奥菜恵 
浅田美代子 
石井竜也 
豊原功補 
松本まりか 
北村有起哉 
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