映画【金融腐蝕列島 呪縛】感想(ネタバレ):銀行再生に挑む男たちの戦い

Kin'yû fushoku rettô: Jubaku
スポンサーリンク

●こんなお話

 腐敗した銀行を再生させようと頑張る人たちの話。

詳細ネタバレあらすじ

 主人公は朝日中央銀行(ACB)企画本部副部長の北野浩。北野は相談役・佐々木英明の娘・今日子を妻に持ち、佐々木とは義理の親子という関係にある。しかし、ACBの改革を進める北野は、やがて自分の義父とも対立することになる。

 丸野証券の利益供与事件をきっかけに総会屋・小田島敬太郎が逮捕され、ACBにも約300億円の不正融資疑惑が浮上する。東京地検特捜部はACB本店を強制捜索するが、経営陣は危機感を示さず、責任の所在も明確にしようとしない。

 ACBと総会屋の間には長年にわたる関係があり、株主総会を円滑に進めるため、歴代の経営陣が総会屋側との関係を維持してきた。小田島への融資には、実現性の疑わしいゴルフ場の会員権を担保にした巨額融資も含まれていた。

 こうした経営陣の姿勢に反発した北野は、片山昭雄、石井卓也、松原秀樹とともに改革へ動き出す。後に「ミドル4人組」と呼ばれる4人は、問題を隠してきた役員の総辞任と経営陣の刷新を求める。

 北野たちは海外経験のある中山公平常務を新頭取候補として推し、ブルームバーグ・テレビジョンのアンカーウーマン・和田美豊の協力も得ながら改革を進める。やがて役員の辞任が決まり、中山が新たな経営体制の中心となる。

 中山新頭取のもとで真相調査委員会が設置され、北野たちは総会屋への融資がどのように決定され、誰が事情を知っていたのかを調べ始める。元経営幹部の今井や久山隆からも過去の融資について証言が出始め、北野は検察に先んじて銀行自身が事実を公表するよう主張する。

 しかし、検察の捜査も進み、太田元副頭取や中澤専務が逮捕される。久山も事情聴取を受けることになり、捜査への対応を終えた後、自ら命を絶つ。久山は中山と北野に遺書を残しており、そこには不祥事への謝罪と、銀行が古い関係を断ち切ることを願う思いが記されていた。

 さらに遺書や資料から、佐々木と総会屋側との深い関係が浮かび上がる。佐々木は銀行内で強い影響力を持ち、小田島への融資にも関わっていた。北野は義父である佐々木と対峙し、最高顧問の辞任を迫る。北野にとっては家族との関係を揺るがす決断だったが、銀行を再生するために佐々木との関係を断つ。

 その後、ACBは総会屋と関係のある情報誌の購読を打ち切り、関連する取引を整理する。さらに総会屋側が関係する不動産の仮差し押さえにも動き出す。中山は従来のような形式だけの株主総会ではなく、株主が自由に質問できる「開かれた株主総会」を行うと宣言する。

 ところが、総会屋との関係を断ち切ったことで、ACBには脅迫状や嫌がらせが相次ぐ。北野の家族にも危険が及び、長男の通学路を記した地図まで送りつけられる。そして石井がACB本店前で銃撃され、病院に運ばれる。石井は一命を取り留めるが、改革が命を懸けた戦いになっていることを北野たちは実感する。

 そして株主総会の日を迎える。会場には警察官や報道陣が集まり、総会屋側の株主から激しいヤジや質問が飛ぶ。それでも中山は逃げずに回答を続け、不規則発言を繰り返す株主を退場させる。ACBが総会屋との関係を断ち切り、不良債権の処理にも着手していることを株主に説明する。

 その中で一般株主の790番が発言し、ACBがこれまで議論を避けてきたことを批判しながらも、天下り、たすきがけ、総会屋など、金融業界に存在した古い慣行を整理しようとしている中堅社員たちの姿勢を評価する。さらに、銃撃された石井への功労金を考えるべきだと訴えると、会場から拍手が起こる。

 株主総会を終えたACBは、古い人脈や総会屋との関係を断ち切り、再生へ向けて動き始める。北野は久山の遺書を和田に託し、佐々木と総会屋との関係についても公表するよう求める。

 北野は久山の形見であるコスモスのネクタイピンを身につけ、ACBの頭取室へ向かう。銀行の改革にはまだ課題が残されているものの、北野たちは総会屋との関係を断ち、隠されていた問題を表に出すところまで進む。北野たちが新しい銀行を作るために働き続ける。

 一年後、北野は久山の墓を訪れる。そこへ小田島が現れ、自分は足を洗うつもりだと北野に告げる。一方、以前から北野を監視していた青年も墓へ現れ、小田島の後を追っていっておしまい。

●感想

 原田眞人監督らしいスピード感のあるカット割りと、登場人物たちが早口で次々と情報を飛ばしていく演出が印象的です。銀行内部の会議でも、誰かが話している途中に別の人物が言葉を挟み、次々と話題が変わっていきます。そのため、金融業界を題材にした作品でありながら、説明ばかりが続くような重さはありません。

 特に面白いのは、働き盛りの男たちが自分たちの会社を立て直すために走り回る姿です。北野、片山、石井、松原の「ミドル4人組」は、上層部が責任を取ろうとしない状況に対して、自分たちの世代が動くしかないと立ち上がります。役所広司、椎名桔平、矢島健一、中村育二が、それぞれ違った立場や考えを持ちながら同じ方向へ進んでいくところに熱さがあります。

 東京地検特捜部がACB本店へ強制捜査に入る場面は、映画の序盤から一気に緊張感が高まります。さらにクライマックスの株主総会では、総会屋側から激しいヤジや質問が飛び交い、中山たちがそれに応じながら総会を進めていきます。金融の専門用語が飛び交う作品ですが、ここまで来ると「この銀行をどう立て直すのか」という一点に集中できるため、かなり盛り上がって見ることができました。

 久山が自ら命を絶つ場面も強く印象に残ります。天井付近から一定の距離を保ったまま撮影する長回しによって、感情を過剰に説明せず、その場に残された人物や空間を見せています。派手な演出が続く作品の中で、ここだけ時間の流れが変わったように感じられる場面でした。

 そして、自分たちの会社が危機に陥り、上層部も頼りにならないと分かったところで、中間世代の銀行員たちが反乱を起こす展開が爽快です。単に会社を辞めて別の場所へ行くのではなく、自分たちが働いてきた銀行そのものを変えようとする。そのため、北野たちの行動には会社員として働く人間ならではの切実さがあります。

 一方で、最初からフルスロットルで進むため、初見ではかなり忙しく感じました。状況説明も最小限で、役員、銀行員、検察、弁護士、記者、総会屋などが次々に登場します。しかも、それぞれが早口で会話するため、誰がどの立場なのかを覚えるだけでも大変です。

 ただ、その情報量の多さも原田監督の魅力の一つだと思います。金融業界の不正融資という題材を扱いながら、会議、強制捜査、内部調査、脅迫、銃撃、株主総会と場面を次々に動かしていくので、114分という上映時間の中に多くの出来事が詰め込まれています。

 難しい金融用語や大勢の登場人物に最初は戸惑いますが、北野たち「ミドル4人組」が何のために動いているのかを掴めば、かなり見やすくなります。銀行という大きな組織の中で、上からの命令を待つのではなく、自分たちで問題を調べ、経営陣に改革を迫り、最後は株主の前に立つ。その姿が、この映画の一番の面白さだと思いました。

☆☆☆

2012/07/16 Hulu 2026/08/09 U-NEXT

監督原田眞人 
脚本高杉良 
鈴木智 
木下麦太 
原作高杉良 
出演役所広司 
仲代達矢 
椎名桔平 
風吹ジュン 
若村麻由美 
佐藤慶 
根津甚八 
矢島健一 
中村育二 
石橋蓮司 
遠藤憲一 
もたいまさこ 
本田博太郎 
黒木瞳 
丹波哲郎 
タイトルとURLをコピーしました