●こんなお話
6年に1度彗星に乗ってやってくる異星人と地球最強の人類が戦う話。
●感想
冒頭、崖から転落する男。彼が目を覚ますと、そこは軍の施設の中。尋問を受けているが、彼は自分の名前さえ思い出せない。どうやら落下の衝撃で記憶を失ってしまっているらしい。そんな彼の前に突如現れたのが、アクション俳優トニー・ジャー演じる謎の人物。軍の兵士たちを圧倒的な身のこなしで次々と倒し、記憶を失った主人公を連れて逃走を図る。
この脱出シーンでは、主人公の視点で描かれる長回しのアクションが印象的に使われており、追われる緊張感と逃げる勢いを体感的に味わえるようになっている。演出に工夫はあるが、アクション自体にはやや重量感がなく、トニー・ジャーの持つスピードとキレがやや抑えめに感じられる仕上がりでした。
トニー・ジャーに導かれる形で再び姿を現す主人公の前に、フランク・グリロをはじめとした数人の仲間たちが登場。彼らの口ぶりから、主人公が「ジェイク」という名で、かつて彼らとともに行動していたことが判明する。やがて語られるのは、6年ごとに地球へと接近する彗星の存在と、そこから現れる異星人の話。地球の戦士9人を選び、その異星人と戦わなければ人類が滅びるという衝撃の設定が明かされる。
さらに、この異星人こそが地球に「柔術」という武術をもたらした存在であるという新たな真実も提示され、人類と宇宙のつながりが不思議なかたちで描かれていく。こうした設定に戸惑う間もなく、主人公は再び軍に捕まり、尋問を受け、そして再び脱走するという目まぐるしい展開へ。
移動中に異星人の襲撃を受け、仲間の元に舞い戻った主人公は、リーダー格と思しき男、ニコラス・ケイジと出会う。彼から語られる言葉にはどこか深い響きがあり、物語の中で精神的な核となるような存在感を醸し出していました。
物語は途中、アメコミ風のチャプター紹介が挟まれるなどユニークな演出を見せつつも、急に戦闘が始まったり、設定の説明が不十分なまま進行したりと、テンポの早さが裏目に出ている部分も。場面転換が多く、アクションの連続によって状況把握が難しくなる場面もありました。
特に印象的な終盤の戦いは寺院が舞台。異星人との直接対決の場で、主人公たちは「完全回復まで5秒かかる」という要素を手に戦いに挑むという。この設定が戦いにどう影響を与えていたのかは不明確なままで、戦闘は続き、決着を迎えます。
異星人は「戦いに敬意を払う」と語りながらも、飛び道具を使用するなど、その理念と行動にズレがあり、観る側としては戸惑いを覚える部分も。また、仲間たちが突然透明になるスーツを身につけたり、主人公と女性キャラクターとの距離感が一気に縮まったりと、展開の急さが印象に残りました。
物語後半では、ニコラス・ケイジが突然「父親」という設定を与えられたり、トニー・ジャーが一時姿を消していたかと思えば再登場したりと、キャラクターの描かれ方にもユニークさがあり。フランク・グリロを含め、豪華キャストが揃っていながらも、それぞれの魅力が十分に引き出されていたかは評価が分かれるところだと思います。
終盤、ついにすべての戦いが終わりを迎え、主人公は自身の運命と過去、仲間との絆を取り戻す。異星人との戦いを通じて、記憶を失った男がもう一度世界とつながり直す物語は、荒削りながらも独特なSFアクションの魅力が詰まっていました。設定の奇抜さや、ジャンルの混ざり合い、演出の挑戦といった要素も多く、アクション映画の一風変わったアプローチを味わいたい方には楽しめる一本でした。
☆
鑑賞日:2022/06/12 Hulu
監督 | ディミトリ・ロゴセティス |
---|---|
脚本 | ディミトリ・ロゴセティス |
ジェームズ・マクグラス |
出演 | ニコラス・ケイジ |
---|---|
トニー・ジャー | |
フランク・グリロ | |
アラン・ムーシ | |
マリー・アヴゲロプロス | |
ジュジュ・チャン | |
リック・ユーン |