映画【仄暗い水の底から】感想(ネタバレ):母娘を襲う怪異

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●こんなお話

 引っ越した団地で恐怖体験する親子の話。

詳細ネタバレあらすじ

 離婚調停中の松原淑美は、5歳の娘・郁子を連れて新しいマンションを探して暮らし始める。夫の浜田邦夫とは親権をめぐって争っており、淑美は郁子との生活を続けるために仕事を探し、出版社で校正の仕事を始める。郁子は近くの幼稚園に通うことになる。淑美自身も幼いころに母親から十分に世話をされなかった経験があり、郁子を自分のもとで育てようとしている。

 ところが、引っ越した部屋では最初から水に関する異変が起こる。天井には大きなシミができ、そこから水が落ちてくる。室内には湿気があり、水道の水にも異常が起こる。淑美はマンションの管理人・神谷に水漏れの修理を求めるが、すぐには問題が解決しない。上の階から子供の足音が聞こえることもあり、淑美は部屋の周囲で起こる異変を調べ始める。

 ある日、郁子がマンションの屋上で赤い子供用バッグを見つける。淑美はそのバッグを処分するが、しばらくすると再び同じバッグが現れる。郁子は姿の見えない相手と話すようになり、マンション内で見知らぬ少女の姿も確認される。

 淑美は幼稚園で、行方不明になった少女・河合美津子の写真を見る。美津子は黄色い雨合羽を着て赤いバッグを持った少女だった。淑美は調べていくうちに、マンションの上の階にある空き部屋が、以前に美津子と父親が暮らしていた部屋だと知る。

 ある日、淑美は郁子の姿が見えなくなったため、上の階の部屋を探す。部屋の中では蛇口から水が流れ続けており、床や壁まで水で濡れている。その中で郁子を見つけ、淑美は娘を連れて自分たちの部屋へ戻る。

 淑美はマンションで起こる水漏れについて弁護士に相談する。弁護士から管理人に話が伝わり、上の階の部屋の水漏れについて修理が行われる。天井の水漏れも収まり、郁子の状態も落ち着き、淑美の生活は一度平常に戻る。

 しかし、その後も郁子の持ち物の中からバッグが見つかり、淑美はそのバッグを見たことで、貯水タンクに関する記憶の映像を見る。淑美は屋上へ向かい、マンションの貯水タンクを調べる。

 屋上の貯水タンクには、最後に点検された時期を示す記録が残っている。その時期は美津子が行方不明になった時期と重なっていることがわかる。淑美はタンクに残された美津子の記憶を見て、美津子が赤いバッグを取り戻そうとして貯水タンクの中へ落ち、そのまま死亡したことを知る。

 淑美が屋上に向かっている間、郁子は部屋に一人で残される。郁子が水道を使うと、蛇口から濁った水が流れ始める。浴室にも水がたまり、美津子の姿が現れる。郁子は浴室の中で美津子に襲われ、水の中へ引き込まれる。

 淑美が部屋へ戻ると、郁子は浴室で倒れている。淑美は郁子を抱き上げ、マンションから逃げようとする。淑美はエレベーターに入り、扉が閉まり始める。

 そのとき、エレベーターの外に郁子の姿が見える。淑美は、自分が抱いている子供が郁子ではないことに気づく。淑美が抱いていたのは美津子だった。水に濡れた美津子は淑美にしがみつき、離れようとしない。

 エレベーターの外にいる郁子は淑美を呼ぶ。淑美は美津子を抱いたままエレベーターに残り、郁子をその場から逃がす。エレベーターが上昇した後、扉が開くと大量の濁った水が流れ出す。淑美と美津子の姿はなく、郁子だけが残される。

 10年後、16歳になった郁子は、かつて淑美と暮らしていたマンションを訪れる。マンションは使われていない状態になっているが、以前住んでいた部屋には淑美の姿がある。淑美は10年前と変わらない姿で郁子の前に現れる。

 郁子は淑美に、一緒に暮らしたいと伝える。しかし、淑美は郁子と一緒に暮らすことはできないと伝える。郁子のすぐ後ろに美津子の姿が現れる。郁子が振り返ると美津子は消えており、再び淑美を見ると淑美の姿も消えている。郁子はかつて母親が自分を守るために美津子とともにエレベーターへ残ったことを知っておしまい。

●感想

 離婚協議中の母親が、娘の郁子を連れて新しいマンションで生活を始めるところから物語が始まります。ところが引っ越してきた初日から、天井には大きなシミがあり、そこから水が落ちてきます。自分だったら、これはかなり気になるので、もっと管理会社に強く訴えてしまいそうです。

 ただ、淑美の場合は離婚協議の真っ最中で、娘の親権も争っていて、仕事も始めたばかり。幼稚園に預けた郁子を迎えに行くために仕事を早く切り上げる必要もあり、生活そのものがかなり忙しい状態です。そこにマンションの水漏れまで加わるので、最初から余裕のない生活になっています。

 そのため、マンションで怪奇現象が起こり始めても、淑美はそれだけに集中できず。天井から水が落ちてくる、上の階から子供の足音が聞こえる、何度捨てても赤いバッグが戻ってくる、水道から変な水が出てくるといった異変が少しずつ積み重なっていきます。

 この作品は、いきなり大きな事件が起こるタイプのホラーではなく、生活の中に水が入り込んでくるような見せ方が印象的です。天井のシミ、雨漏り、湿気、水道水、浴室、貯水タンクと、最初から最後まで水が怪異と結びついているのが印象に残りました。

 個人的には、幽霊そのものよりも、何度訴えてもすぐには対応しない管理人や、子供を必要以上に叱る幼稚園の先生など、周囲の大人たちの対応のほうが不気味に感じました。淑美が困っている状況に対して、周囲が十分に助けてくれないため、マンションで起こる異変を一人で抱え込むことになります。

 そして、行方不明になった美津子の存在が分かってから、これまで起こっていた水漏れや赤いバッグの意味がつながっていきます。美津子が貯水タンクで亡くなっていたことが分かり、最後には郁子まで美津子に狙われる展開になります。

 クライマックスでは、淑美が郁子を守るために美津子を抱いたままエレベーターに残るという選択をします。ここが作品の大きなポイントなのですが、個人的には、そこまで強く感情移入できませんでした。

 というのも、淑美は冒頭から離婚協議や親権問題を抱えていて、かなり苛立った状態で描かれています。もちろん、娘を守ろうとしていることは分かりますし、仕事と子育てを両立しながら親権を争っている状況も描かれています。ただ、最初からストレスを抱えている人物なので、怪異によって少しずつ追い詰められていくという印象が弱く感じました。

 最初は穏やかに生活していた淑美のところに水漏れや赤いバッグなどの異変が少しずつ起こり、そこから生活が崩れていく構成だったら、終盤の選択にも違った印象を持てた気がします。

 そのため、最後に淑美が自分を犠牲にして郁子を守る場面も、設定としては分かるのですが、急な決断に感じて個人的にはそこまで悲しく感じられませんでした。

 ただ、作品全体を包んでいる湿った雰囲気はかなり好みで、雨が降り続き、マンションの中も湿気があり、天井から水が落ち、蛇口から濁った水が出て、最後には大量の水が流れ出す。画面全体がずっと湿っているような感覚があります。

 派手な怪物が出てくるホラーではなく、マンションという日常の場所に水と少女の幽霊が入り込み、少しずつ生活を変えていく作りなので、全体のジメジメした雰囲気はとても印象に残りました。中田秀夫監督らしい、水を使ったじわじわとした恐怖を楽しめる作品だと思いました。

☆☆☆

鑑賞日: 2013/03/15 Hulu 2026/09/19 U-NEXT

監督中田秀夫 
脚色中村義洋 
鈴木謙一 
原作鈴木光司 
出演黒木瞳 
菅野莉央 
小口美澪 
水川あさみ 
小日向文世 
徳井優 
谷津勲 
小木茂光 
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