●こんなお話
退役軍人が失業中で職探しをしつつバカ騒ぎする話。
●感想
主人公は戦争から帰ってきたばかりの退役兵。心に深い傷を抱えて地元へ戻ってきたが、日常にうまくなじめず、職を探そうとしてもなかなかうまくいかない。演じるのはクリスチャン・ベイルで、ひとつひとつの表情や動きから感情があふれていて、どうにもならない不器用さと衝動的な振る舞いを全身で表現していました。
とはいえ、その演技のすごさに関心しながらも、主人公の人物像はなかなか手強く、観ていてイライラする瞬間が多かったのも事実。どこかで踏み外したまま、そのまま歩き続けているような印象があり、やりきれなさとともに不安定な空気をまとっている。戦場でのトラウマが原因なのか、周囲の人間との距離感もつかめず、感情の起伏が激しくて、時に身内に対しても爆発する。
そんな主人公に巻き込まれるのが、彼の悪友たち。彼らもまた地元の片隅でうまく生きていけずに足踏みをしているような人たちで、それぞれにどこか欠けた部分を抱えながら、友人としてのつながりを保とうとしている。中でも、主人公の親友が就職活動に前向きになろうとする姿が描かれる場面では、どこか微笑ましさもあり、面接の電話がかかってきたふりをして恋人をごまかそうとするやりとりは、不器用ながら必死に前を向こうとしているのが伝わってきて、印象的でした。
主人公自身も、危険な任務を請け負う仕事の話が舞い込んできて、「もしかするとこれが転機になるのか」と思わせる展開になるものの、そこから先が予想とは少し違った方向へ進んでいく。物語の舞台はそのまま地元にとどまり、仲間たちとバカ騒ぎを続けていくなかで、思わぬ事態に巻き込まれていく。
全体としては、日常のなかに漂う焦りや鬱屈を切り取った会話劇のようでもあり、特に前半はテンポを落として、登場人物たちの小さな感情の揺れをじっくり見せていく構成になっていたと感じます。軽口を交わすやりとりが延々と続く場面も多く、好き嫌いが分かれるかもしれませんが、自分はもう少し物語の輪郭がはっきりしていた方が入り込めたかもしれません。
とはいえ、俳優陣の演技には見応えがありました。クリスチャン・ベイルの荒々しい演技と、それに寄り添おうとする友人たちの姿の対比が映像として鮮やかで、崩れかけた日常の中でどうにか立ち直ろうとする人物たちの葛藤がにじんでいたと思います。
物語としての広がりや結末に対して多少戸惑う部分はありましたが、アメリカの片隅で生きる若者たちの姿を切り取った一編として、等身大の温度で描かれていたのは確かでした。
☆☆
鑑賞日: 2018/05/17 DVD
監督 | デヴィッド・エアー |
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脚本 | デヴィッド・エアー |
出演 | クリスチャン・ベイル |
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エヴァ・ロンゴリア | |
フレディ・ロドリゲス |
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