●こんなお話
ニューヨークにやってきた主人公が唐人街のドンから孫を殺害した犯人を見つけるように依頼されて連続殺人鬼を追いかける話。
●感想
物語の舞台はニューヨーク。中国からやってきた探偵コンビが事件解決に挑むアクション・ミステリー作品。叔父に呼び出されてニューヨークを訪れた甥は、結婚式だと思っていたところ、実はそれは嘘。実際には、唐人街の有力者の孫が殺害され、世界中から集められた探偵たちが犯人を探すという展開だった。賞金を懸けた事件捜査に巻き込まれるかたちで、天才肌の甥と、どこか憎めない叔父の凸凹コンビが街を駆け巡る。
ニューヨークの観光地が次々と映し出される映像は迫力があり、中国映画とは思えないほどスケールの大きなロケーションに驚かされました。観光名所を舞台にした疾走感ある演出が続き、観ているだけで楽しい気分になれる一本だったと思います。
主人公が捜査を進める際、画面に文字情報が浮かび上がったり、CGで街の構造を再構成して犯行時間や場所を導き出すといった演出も効果的で、視覚的に飽きることがなかったです。クライマックス手前で、これまでの手がかりを一つひとつ整理し、犯人に迫っていく過程もスピード感があり、非常に引き込まれました。風水や陰陽五行など中国的なモチーフがストーリーに自然に組み込まれているのも面白かったです。
ただし、全体のトーンとしては非常に濃厚なチャイナコメディ色が強く、登場人物たちのテンションも高めです。特に叔父のキャラクターはオーバーリアクションの連続で、その勢いについていくには相性が分かれるかもしれません。女装で危機を切り抜けたりといったユーモアもありましたが、個人的には少し笑いどころがつかみにくかった印象もあります。
ストーリー上、移動のたびにドタバタ劇が入り、アクションが差し込まれる構成となっていて、ニューヨークの街でカーチェイスをしたり、馬に乗って移動したりする場面もありました。そうした部分が作品のテンポを盛り上げる一方で、正直なところ、物語の本筋にはあまり寄与していないようにも感じてしまいました。
本作の展開は「追い詰められた末に逆転する」という流れが何度も繰り返されており、毎回どのように主人公たちがピンチを切り抜けていくのかという楽しみがありました。特に終盤、探偵仲間たちが警察署を脱出するくだりはテンポよくまとまっていて、見応えがあったと思います。
日本代表として登場する妻夫木聡さんも、序盤から英語と中国語を交えたセリフでテンポよく物語を動かしており、その自然な存在感に思わずニコニコしながら見入ってしまいました。ただ、彼の役が早い段階で事件から離れてしまう構成には少し物足りなさも感じました。
終盤、事件が一通り終わった後にキャストとスタッフが全員でダンスをするシーンが用意されており、そのサービス精神に和やかな気持ちでエンドロールを迎えることができました。細かい理屈を抜きにして、画面から伝わる熱量や勢いを楽しむタイプの作品だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2021/11/18 キネカ大森
監督 | チェン・スーチェン |
---|---|
脚本 | チェン・スーチェン |
出演 | ワン・バオチャン |
---|---|
リウ・ハオラン | |
シャオ・ヤン | |
ナターシャ・リュー | |
シャン・ユーシエン | |
ワン・シュン | |
妻夫木聡 | |
マイケル・ピット |