映画【僕はチャイナタウンの名探偵】感想(ネタバレ):記憶力で謎を追う!バンコクで繰り広げられる冒険ミステリー

Detective Chinatown
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●こんなお話

 バンコクで親戚のおじさんが殺人容疑をかけられたので、逃走しながら事件の真相に迫る話。

●感想

 警察官を目指していた主人公は、警察学校の試験に落ちてしまい、意気消沈していた。そんな彼に気分転換を勧めた家族の言葉に背中を押されて、タイにいるおじさんを訪ねることになる。一方その頃、タイでは殺人事件が発生しており、現地の警察署では2人の刑事が捜査権を巡って小競り合いを繰り広げていた。

 バンコクに到着した主人公だが、迎えに来るはずのおじさんは麻雀に夢中で、すっかり約束を忘れていた。やっと会えたかと思えば、おじさんは観光案内を申し出つつ、主人公のお金をせびってきて、その場の空気に圧倒される主人公との間に何とも言えないズレが生まれていく。

 ここから先は、おじさんのテンション高めなキャラクターが全開で、お芝居もずっとハイペース。アジア映画らしい熱量のあるコメディ演出が続いていくので、この空気に乗れないと少々戸惑うかもしれません。ただ、それも本作の味わいのひとつだと思います。

 そんなふうに主人公がタイでの時間に疲れ始めたところに、警察が突然やってきて、おじさんが何やら怪しい動きを見せて逃走。なぜか主人公も一緒に逃げる羽目になり、ここから逃走劇が始まっていく。実はおじさんが指名手配されていて、殺人事件の被害者が持っていた金塊にも関わっているらしいという背景が明らかになり、黒社会の人々にも追われていくことになる。

 逃げ込んだ先のおじさんの知人女性の家で、警察と黒社会の双方がやってきて、家の中でみんなが身を潜めるシーンは、昔の香港映画のようなテンポで進み、まるでジャッキー・チェン作品のような楽しい“かくれんぼ”が繰り広げられました。

 その後、おじさんが被害者の現場にいただけで防犯カメラに誰の姿も映っていないことから、容疑が深まり、主人公と一緒に真相を追うことになる。警察に忍び込んで証拠映像を手に入れたり、被害者が通っていたカフェを訪れて話を聞いたり、息子の同級生の女の子から証言を得たりと、事件を追う流れも描かれます。

 特に印象的だったのが、主人公の特異な記憶力や観察眼を映像で表現する演出でした。彼はコミュニケーションがやや苦手なものの、一度見たものをすぐに覚えてしまう記憶力を持ち、防犯カメラの映像や通りすがりの人々の顔を一瞬で記憶していく。主観的な映像でそれを表現しており、観ていて楽しい場面が多くありました。

 事件の手がかりを追いながら、女子中学生の自殺未遂をきっかけに病院へ駆けつけたり、警察と黒社会の両方に追われる中で銃撃戦に巻き込まれたりと、ハードな展開も差し込まれていきます。特に横移動での銃撃戦を切り取るショットなどは視覚的にも面白く、勢いがありました。

 ただ、重要な登場人物であったはずの黒社会の人たちが、その後の描写では「1人死亡、2人怪我」といった台詞で簡単に処理されてしまったのは、やや寂しく感じる部分でもありました。

 物語後半では、主人公とおじさんの間に対立も生まれ、一度別々の道を歩むことになります。そのさなか、事件現場で再び手がかりを掴んだ主人公が、何者かに襲われ、放火騒ぎも起きてしまうなど、次々と出来事が重なっていき、観ていて退屈する時間はなかったです。

 そして終盤、主人公の名推理によって徐々に真相が明かされていきます。1週間分の防犯カメラの記録の中に犯人が隠れていたことや、被害者の変装トリックなど、複数の仕掛けが明かされていく。さらには、事件にはもう一段階裏があり、被害者の息子の失踪、女子中学生の行動、そして義父が巻き込まれていた経緯までが浮かび上がってきます。

 135分という長尺に加えて、コメディ部分が多めなのもあって少し長く感じてしまう箇所もありましたが、主人公の記憶力を使った主観的な映像や、ドタバタ感を活かしたコミカルな演出は最後まで楽しく鑑賞できました。

☆☆☆

鑑賞日:2022/03/22 WOWOW

監督チェン・スーチェン
脚本チェン・スーチェン
出演(声)ワン・バオチャン
リウ・ハオラン
チェン・フー
トン・リーヤー
シャオ・シェンヤン
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