映画【死霊のえじき:Bloodline】感想(ネタバレ):ゴア描写に満ちた終末世界、ゾンビとの駆け引きの果てに

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●こんなお話

 ゾンビが蔓延した世界で基地に閉じこもって生活するけど内輪揉めで自滅していく話。 

●感想

 ゾンビが人間に襲いかかり、首を食いちぎったり内臓を引きずり出したりといった描写がしっかりと用意されていて、そうした意味ではゾンビ映画としての基本的な楽しさはきちんと押さえている作品だったと思います。ゾンビ映画ならではの、観ている側がある程度覚悟して期待しているであろうゴア描写をたっぷりと盛り込みつつ、画面全体からは派手で刺激的なホラー演出のサービス精神が感じられました。

 物語は、ゾンビが蔓延した世界で隔離された施設の中、人類の希望として娘の治療薬を探す科学者の主人公を軸に進んでいきます。治療薬を求める動機自体は明確で感情移入できそうなのですが、その主人公を含めて登場人物たちの行動がことごとく観客の予想を裏切る方向に向かっていくのが特徴的でした。

 主人公は、他の仲間からの反対を押し切って、病気の娘のために薬を探しに街へ出かけます。その結果として仲間が犠牲になってしまっても、それについて深く悔やむ様子はあまり見られず、次にまた知性を持ったゾンビを捕獲するという行動に移ります。さらにサンプルが必要だと考えた主人公は、再びゾンビの中に飛び込んでいき、そこでも当然のように犠牲者が出てしまいます。人が倒れていってもどこか反省の色が薄く、科学的探究心が先行してしまっているような姿が印象に残りました。

 周囲の軍人たちも、サバイバル訓練を受けたはずの精鋭というよりは、どこか素人っぽい立ち振る舞いで、5年間もゾンビと戦いながら生き延びてきたとは思えない様子でした。とらえたゾンビに気軽に近づいたかと思えば、あっさりと鍵を奪われてしまったり、武器を構える手つきにすら緊張感が乏しかったりと、プロフェッショナルとは思えない言動が続きます。

 また、主人公の娘もまた、混乱の中でゾンビのいる方向へ走り出してしまうなど、命の危険が目前にある状況とは思えない行動をとってしまい、観ている側としてはどういう視点で受け止めればいいのか、次第に戸惑いが強くなっていきました。正直なところ、途中からは遠い目で画面を眺める時間が多くなってしまった印象です。

 そんな中で登場する司令官は、物語上では主人公に対立する役割を担っています。命令に逆らいがちな主人公に対して、彼は一貫して反対意見を述べ、リスクを最小限にとどめようとします。あくまで合理的に物事を進めようとしているように映るのですが、劇中では孤立し、まるで悪役のような扱いを受けてしまいます。ただ彼の言動を見ていると、どう考えても筋が通っているように思えてしまい、ラストまで観終わっても、どこか報われないキャラクターとして心に残りました。

 全体として、ゾンビ映画らしい血みどろの描写や恐怖演出はしっかりと作り込まれている印象で、ジャンルを楽しみにしている方には一定の満足感があると思います。一方で、登場人物たちの判断や行動があまりにも観客の感覚からずれてしまっている場面が多く、物語の展開を受け入れるのに少し心の準備が必要かもしれません。

鑑賞日:2018/04/17 DVD

監督エクトル・エルナンデス・ビセンス 
脚本マーク・トンデライ
出演ソフィー・スケルストン 
ジョナサン・シェック 
ジェフ・ガム 

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