●こんなお話
売春婦殺人事件が起こってる中、主人公が狙われて車で逃げたら交通事故に遭ってしまって盲目になり、ぶつかった車のサバイバーの少年と一緒に生活することになって殺人犯に追いかけられる話。
●感想
街の風景を静かにとらえた長回しの映像。道行く人々がふと足を止めて空を見上げている。車を運転していた主人公もその様子を不思議に思い、車を降りて一緒に見上げる。すると空がゆっくりと暗くなり、皆既日食が訪れる。人々の静かなざわめきの中、まるで世界の終わりが忍び寄ってくるかのような空気が漂い、そこからオープニングクレジットが始まっていく。
場面が切り替わると、売春婦の女性が仕事を終えてホテルから出てくる。夜の街を歩いていると、突如として謎の人物に襲われ、首にワイヤーを巻かれて命を奪われる。殺害現場に警察が到着し、検証を進める中で、目撃者の証言から白いバンが現場から立ち去ったことが明らかになる。
その後、主人公がどのように日々の仕事をこなしているのかが描かれる。多くの客は穏やかでジェントルマンな雰囲気を持っていたが、ある日やってきたのは異臭を放ち、自称ブリーダーを名乗る男。彼の態度に我慢ができず、主人公は罵声を浴びせて追い返してしまう。別の日に現れた客は奇妙な性癖を押しつけてきて、それを拒んで逃げ出すと、そこに白いバンが現れ、彼女を追いかけてくる。慌てて逃げる途中で車と衝突し、事故の衝撃で相手の両親は亡くなり、後部座席の少年だけが助かる。
事故の影響で視力を失った主人公は病院に運ばれ、盲目者の生活を支援するスタッフから白杖の使い方や信号の渡り方などを教わることになる。後日、事故で両親を失った少年が暮らす施設を訪ね、謝罪を伝えるが、少年は主人公に強い怒りを抱いていて、彼女を責める。しかし、施設内でいじめられる少年を助ける主人公の姿に、次第にふたりの関係に小さな変化が生まれていく。
やがて、施設での生活に嫌気がさした少年は、主人公の名刺を頼りに彼女の元を訪ねてくる。そのままふたりは共同生活を始めることになり、生活費を稼ぐために主人公は再び客をとる仕事に戻ることになる。
そんなある日、刑事が現れ、少年を誘拐した疑いをかけられる。夜に捜査令状を持って来るという刑事の言葉を聞いた主人公は、少年の家に忍び込み何かを探るが、そこにも警察が現れてしまい、ふたりは逃げ出すことになる。主人公の家にやってきた刑事たちは謎の人物に襲われ、命を落とす。
助けを求めて、かつて支援をしてくれていた盲目指導員の家を訪ねると、そこにも白いバンが現れ、指導員が襲われてしまう。逃げ込んだ夜の森の中で、犯人との追いかけっこが始まり、道中でミズヘビの巣に落ちてしまうなど、予想もつかない出来事が次々と襲ってくる。森の中で出会ったおじさんたちに助けられるが、そこにも犯人が現れて、延々と殴り合いが続いていく。
ついに明かされる犯人の正体は、かつて現れたブリーダーの男だった。主人公は犯人に捕まり、彼の家に監禁されるが、そこには主人公が飼っていた盲導犬の姿もあった。檻から逃れた盲導犬が、主人公と犯人の命令の狭間で揺れながらも、主人公の声に応えて、犯人の喉元に噛みつき、命を奪う。
そしてラスト、少年は香港に住む親戚に引き取られ、主人公と別れて旅立っていく。
街の風景と自然音だけで描かれる長回しから始まる導入は、とても静かで不思議な感覚に包まれていました。人々が一斉に空を見上げている光景は、どこか終末的なムードもあり、思わず引き込まれてしまうような始まりでした。
その後は、さまざまな要素が詰め込まれていて、両親を亡くした少年と主人公が一緒に暮らす展開や、謎の白いバンの存在、やたらと長い追いかけっこの場面などが盛り込まれていて、流れとしては勢いがあるのですが、個人的には話の運びが急に感じられる場面もあり、もう少し丁寧に描かれてもよかったのではと思うこともありました。
それでも、少年と主人公が少しずつ心を通わせていく描写や、盲導犬が見せるクライマックスの選択など、印象に残るシーンも多くありました。特にミズヘビの巣に落ちてジタバタする長いシーンや、イタリア製のパトカーの赤と青のピカピカが夜の街に映える映像など、細かいところが妙に心に残る作品でもありました。
☆☆☆
鑑賞日:2023/04/23 イオンシネマ座間
監督 | ダリオ・アルジェント |
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脚本 | ダリオ・アルジェント |
フランコ・フェリーニ |
出演 | イレニア・パストレッリ |
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アーシア・アルジェント | |
シンユー・チャン |