●こんなお話
DVな父親と難病の母親なネクラでいじめられっこの青年と兄貴分のいとこのお兄ちゃんとさわやか青年が、謎の物体に触れたら超能力を手にしてしまって、だんだんと暴走していく話。
●感想
高校生のアンドリューは、いじめに遭い、さらに家庭では父親から虐待を受けていた。孤独の中で彼が始めたのは、ビデオカメラを常に持ち歩き日常を記録することだった。唯一の友人は従兄弟のマット。ある夜、学校の人気者スティーブに誘われ、三人はパーティから森へ向かう。そこで見つけた地面に開いた穴の奥には、不思議な結晶体が輝いていた。三人は謎のエネルギーを浴び、やがて念動力を操る力を手にする。
最初はトランプを浮かせたり、スーパーボールを飛ばしたり、車を少しだけ動かして笑い合う程度で、子どもの悪ふざけの延長のようだった。力を使うたびに強さは増し、ついには空を飛べるようになり、雲の上でサッカーをしたり雷雲に突っ込んで肝を冷やしたりと、三人の友情と万能感に満ちた時間が流れる。
だが、アンドリューの心は家庭環境の影に次第に蝕まれていく。病気の母は弱り、父は暴力と借金に支配されていた。鬱憤のはけ口のようにアンドリューは力を危険な方向へ使い始め、やがて「自分は頂点捕食者だ」と思い込むようになる。友人たちは彼を止めようとするが、暴走は止まらない。父との口論に沈む彼を励まそうとしたスティーブが落雷事故で命を落とし、さらに母の薬を買うためにレジを襲撃して爆発を招いて自ら重傷を負うなど、悲劇は続いていく。
ついに父親から母親の死を知らされて罵られたことをきっかけに街の中心で感情を爆発させたアンドリューは、超能力を暴走させて建物や車を吹き飛ばし、街を大混乱に陥れる。かつての友を救おうとしたマットは彼を説得するが叶わず、力で彼を止める決断を下す。最後にマットはチベットの山奥を旅し、カメラを掲げて「君が見たかった景色を見せる」と亡き友へ語りかけておしまい。
アクションとしては、駐車場でのイタズラや空を飛ぶシーンなど、テレキネシスの映像は迫力ある場面もありました。しかし、同様の映像表現はこれまで何度も観てきたものでもあり、特別な新鮮さはあまり感じられませんでした。むしろ序盤は青年たちが力を得てダラダラとはしゃぐ様子が続き、映画が動き出すのは50分を過ぎてからで、全体が85分という短さを考えるとやや展開が遅いと感じました。
また、日常を記録するヒロイン的存在が登場しますが、物語への関わりが薄く、時間をかけて描いたわりには重要性が乏しかった印象です。それでいてカメラに何でも打ち明けてしまう姿は、むしろ不要なキャラクターに見えてしまいました。
ラストでやっと大規模な対立と暴走が描かれるため、もっと早い段階からアンドリューとマットの対立を描いていれば映像の迫力も際立ったのではないかと思います。作品全体として、カメラを通して全てを映すという手法は発想として面白いですが、実際には見づらさが強く、映像的な効果を十分に活かしきれていない印象でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2013/09/28 TOHOシネマズ府中 2017/11/12 Blu-ray 2025/09/10 Disney+
| 監督 | ジョシュ・トランク |
|---|---|
| 脚本 | マックス・ランディス |
| 原案 | マックス・ランディス |
| ジョシュ・トランク |
| 出演 | デイン・デハーン |
|---|---|
| アレックス・ラッセル | |
| マイケル・B・ジョーダン | |
| マイケル・ケリー | |
| アシュレイ・ヒンショウ |


