●こんなお話
イタリアの小さい町で奇跡を起こすとされる主人公のサバイバルの話。
●感想
物語は17世紀のイタリア。少女が父親に付き添われて修道院へと向かっている途中、盗賊に襲われる。金目のものを要求されるが、少女は盗賊の頭に向かって「神の天罰がくだる」と告げた直後、頭領の頭に鳥の糞が落ちるという奇跡のような出来事が起こる。盗賊の頭はそれを見て笑いながら去り、少女の不思議な力を感じさせる印象的な導入。
それから18年後、少女はベネデッタという修道女となり、時折キリストの幻影と対話するという神秘的な白昼夢に悩まされている。そんなある日、父親の虐待から逃れてきたバルトロメアという若い女性が修道院にやってくる。ベネデッタが教育係として彼女を導くうちに、次第に2人は深い関係を築いていく。
ベネデッタは演劇の最中や讃美歌の最中にも幻視を見て倒れるようになり、ある日ついに「聖痕」が現れる。これをきっかけに修道院内で大きな波紋が広がる。修道院長は疑いの目を向けるが、司祭長は巡礼者を呼べる存在としてベネデッタを認めることにする。修道院長の娘はベネデッタが自作自演していると主張し、母親もそれを知っていると訴えるが、娘の声は届かず、むち打ちの罰を受けてしまう。
ベネデッタは修道院内でますます影響力を増し、ついには新たな修道院長となる。バルトロメアとは肉体関係も結び、宗教的禁忌を超えた情熱的な関係が描かれる。しかし空には彗星が現れ、不吉な予兆の中で修道院長の娘は命を絶ってしまう。
その後、元修道院長は教皇大使に接触し、ベネデッタとバルトロメアの関係や聖痕の虚偽を訴える。ベネデッタの告発を受けて、教皇大使たちは再び修道院へ。バルトロメアは拷問され、関係の事実を無理やり引き出される。証拠として道具が見つかり、ベネデッタには火あぶりの刑が宣告される。
同時に元修道院長はペストを発症し、地下に監禁される。ベネデッタはその地下室を訪れ、耳元で何かをささやく。
処刑当日、教皇大使は「告白すれば絞首刑にしてやる」と迫るが、ベネデッタは群衆の前で新たな聖痕を見せ、神の証を主張する。そして地下から出てきた元修道院長が「教皇大使がペストを街に持ち込んだ」と告白。怒った民衆が暴動を起こし、教皇大使はリンチの末に殺されてしまう。
混乱の中で、ベネデッタとバルトロメアは街を出ようとするが、結局ベネデッタはペシアの街に戻ることを選び、バルトロメアと別れる。ラストでは、ベネデッタがその後の人生を地下牢で過ごしたことがテロップで語られておしまい。
ベネデッタが本当に聖女なのか、それとも巧妙な嘘つきなのか、その内面が最後まで読み取れない描き方が非常に面白く、宗教という巨大なシステムがどのように運営され、人を巻き込んでいくかが描かれていました。教会が常に「集客」と「影響力」を重視しながら動いている様子が現代的でもあり、興味深いです。
宗教の奇跡を扱いながらも、難解な印象はなく、むしろ「この世界でどう生き残るか、どうサバイブするか」に焦点を当てた人間ドラマとして楽しめました。信仰、策略、愛、裏切り、政治、暴動などが絡み合う濃密な物語で、スリリングな宗教サバイバル劇としてしっかり魅せてくれる作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2024/02/04 WOWOW
監督 | ポール・ヴァーホーベン |
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脚本 | デヴィッド・バーク |
ポール・ヴァーホーベン | |
原案 | ジュディス・C・ブラウン |
出演 | ヴィルジニー・エフィラ |
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ダフネ・パタキア | |
シャーロット・ランプリング | |
ランベール・ウィルソン | |
オリヴィエ・ラブルダン | |
ルイーズ・シュヴィロット | |
エルヴェ・ピエール | |
クロチルド・クロー |