映画【バットマン ビギンズ】感想(ネタバレ):闇へ踏み出す青年の誕生を描くバットマン始動譚

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●こんなお話

 大富豪が自分の街の悪党たちを退治していく話。

●感想

 裕福なウェイン家の息子ブルース・ウェインは、幼いころ井戸に落ちてコウモリの群れに襲われた経験から、強い恐怖を抱えたまま成長する。後日、両親と共に劇場へ出かけた際、舞台に現れたコウモリに怯えて退席を願い、その帰り道で強盗ジョー・チルに遭遇し両親を失う。ブルースは孤児となり、執事アルフレッドに育てられる。

 大人になったブルースは、チルが司法取引で釈放されると知り、復讐のために銃を手にする。しかし、チルは先にマフィアによって消され、ブルースは怒りと虚無だけを抱えることになる。幼なじみのレイチェルから街の腐敗を突きつけられたブルースは、自らの弱さと恐怖を知るために放浪の旅へ出る。世界中で犯罪者の心理を学び、軽犯罪に手を染めながら社会の裏を見つめていく中で、ヘンリー・デュカードと名乗る男に出会い、彼の導きで影の同盟の拠点へ辿り着く。

 ブルースは指導者ラーズ・アル・グールの思想のもとで過酷な修行に身を投じ、恐怖を克服し、戦闘技術を磨いていく。しかし、彼らの目的が腐敗した都市ゴッサムの壊滅だと知ると反発し、儀式として罪人の処刑を強要されると拒み、施設を焼き払って脱出。デュカードを救い出し、ゴッサムへ戻る。

 帰郷したブルースは、崩れかけたウェイン企業の再建に取り組みつつ、犯罪が蔓延した街を救う方法を探る。技術部門のルーシャス・フォックスの協力で軍事試作品を入手し、特殊スーツやグラップルガン、装甲車タンブラーを身にまとい、恐怖を象徴する存在としてバットマンを形作る。

 やがてファルコーニ率いる犯罪組織を揺るがし、スケアクロウとして暗躍する精神科医クレインと衝突する中で、裏で糸を引く黒幕が現れる。再び姿を見せたデュカードこそ、本来のラーズ・アル・グールだった。彼はゴッサムの水道へ恐怖ガスを流し込み、大規模蒸気化装置で街全体に吸わせる計画を進めていた。

 街は錯乱した住民で混乱し、ゴッサムは崩壊寸前となる。バットマンはゴードンと協力して装置の破壊を試み、自らは暴走するモノレール上でラーズと対決する。激闘の末、バットマンは彼を追い詰め、救わずにその場を離れる。ゴードンが線路を破壊し、モノレールは墜落し、ラーズの野望は終わる。

 影の同盟の襲撃によってウェイン邸は焼失するが、ブルースは再建を誓い、ゴードンから新たな犯罪者の存在を知らされる。現場に残されたジョーカーのトランプが、次なる嵐の訪れを示していた。バットマンはゴッサムの夜へと姿を消しておしまい。


 本作は、重く沈んだ世界観の中に力強い美しさがあり、画面の質感や音楽の響きが一体となって独特の魅力を生み出していると感じました。特にハンス・ジマーとジェームス・ニュートン・ハワードによる音楽は作品の緊張感をしっかり支えていて、その相性の良さに圧倒されました。

 その一方で、アクションシーンの見せ方はやや見えづらく、迫力よりも混乱が先に立つ場面もあり、映像としてのキレをもっと味わえたら嬉しかったとも感じます。バットマンの装備の面白さやギミックを楽しむタイプの快感よりも、物語の深さを優先した構成に寄っている印象でした。また、スケアクロウの扱いは個人的に消化不良で、存在感が十分に活かされていないように思えてしまいました。

 序盤ではブルースの少年時代と修行時代を行き来する構成が続き、物語の運びがゆっくりと進むため、やや重たさを感じる瞬間もあります。恐怖ガスを使った幻視の表現も、登場人物が受けている恐怖の深刻さと画面に映る映像との温度差があって、どの視点で受け取れば良いのか少し迷う部分もありました。

 しかし、バットマンが街へ姿を現し、悪人たちと渡り合うようになってからは作品全体に勢いが出てきて、ヒーローものとしての面白さがはっきりと立ち上がってきます。勢ぞろいした名優たちの存在感も圧巻で、ただ同じ画面にいるだけで作品の格を引き上げているように感じました。重厚な雰囲気の中で、確かな説得力を持つキャストたちの演技が光る作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2012/06/30 Blu-ray 2020/04/16 NETFLIX 2025/12/06 U-NEXT

監督クリストファー・ノーラン 
脚本クリストファー・ノーラン 
デイヴィッド・S・ゴイヤー 
出演クリスチャン・ベール 
マイケル・ケイン 
リーアム・ニーソン 
ケイティ・ホームズ 
ゲイリー・オールドマン 
キリアン・マーフィ 
トム・ウィルキンソン 
ルトガー・ハウアー 
渡辺謙 
モーガン・フリーマン 
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