●こんなお話
バービーの世界で生きてきたバービーが人間世界に行って、またバービーランドに戻ったら自分の知ってる世界ではなくなっている話。
●感想
子どもたちが「子ども人形」で遊んでいる場面から始まります。そこに突如として「バービー人形」が登場し、子どもたちは手にしていた子ども人形を次々に放り投げ、バービー人形に夢中になります。続いて主人公である“定番バービー”の日常、バービーたちが暮らす「バービーランド」の明るく華やかな世界が紹介されていきます。
いつものように完璧な朝を迎えるはずのバービーですが、突如としてシャワーの水が冷たく感じられ、空を飛べなくなったり、足が地面についてしまったりと異変が起こります。これらの原因が、バービーとつながっている人間界の持ち主の女の子にあると考えたバービーは、ケンを伴って人間の世界へ向かうことを決意します。
人間の世界に到着したバービーは、バービーランドとは全く異なる「男性優位社会」の現実に大きなショックを受けます。一方で、ケンはこの男社会に魅了され、バービーより先にバービーランドへと帰還してしまいます。
その後、バービーは探し求めていた女の子にようやく出会いますが、彼女からバービー人形に対して批判的な意見をぶつけられてしまいます。さらに、彼女の母親がバービー人形を販売するマテル社の社員であり、実は母親こそが今回の異変の原因であったことが判明します。マテル社はバービーを捕まえようと画策しますが、女の子の母親が助けに来てくれたことで、再びバービーランドに戻ることができます。
しかし、帰還したバービーたちを待っていたのは、ケンによって構築された「男社会化」されたバービーランドでした。バービーは大きく落ち込みますが、母親の励ましによって立ち直り、仲間のバービーたちの“洗脳”を次々に解いていき、やがてバービーランドを元の姿へと取り戻していきます。
物語の終盤では、バービー人形の生みの親である開発者が登場し、バービーに「人間になること」を提案。バービーは新たな道を歩むことを選び、人間の世界で産婦人科を訪れるシーンでおしまい。
本作では、男女の社会的な役割や平等、ジェンダーに対する視点をバービーというアイコンを通じて描いており、それをコミカルかつポップな演出で表現した点は非常にユニークで興味深いと感じました。特に、現代社会における男性優位構造を戯画化し、視覚的に楽しく、エンターテインメントとして成立させている手法は見事です。
しかしながら、そうしたメッセージ性や社会的テーマの強調に対し、物語そのものの展開やキャラクターの関係性の描き方にはやや弱さを感じました。たとえば、マテル社の社員たちとの追いかけっこはギャグ調で描かれているものの、緊迫感や笑いの要素がやや中途半端で、物語の流れに十分なインパクトを与えていたとは言い難い部分もありました。
また、バービーとケンの会話中心の構成が続くため、映像的・演出的なバリエーションに乏しく、退屈さを覚えてしまう場面もございました。
とはいえ、本作は「バービー」という長年愛され続けたキャラクターを使って、現代社会に対する問いを投げかけた意欲的な作品であり、見た目の華やかさや衣装、セットの完成度も非常に高く、ビジュアル面では一見の価値があります。
☆☆☆
鑑賞日:2024/09/18 NETFLIX
監督 | グレタ・ガーウィグ |
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脚本 | グレタ・ガーウィグ |
ノア・バームバック |
出演 | マーゴット・ロビー |
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ライアン・ゴズリング | |
ウィル・フェレル | |
シム・リウ | |
デュア・リパ | |
ナレーション | ヘレン・ミレン |