●こんなお話
インドネシア独立のために日本敗戦後もインドネシアに残って戦った人たちの話。
●感想
物語は、日本軍の主人公たちがオランダの植民地支配からインドネシアを「解放する」という大義のもとに現地へ向かい、若者たちを訓練していく過程から始まります。
彼らは道場を作り、インドネシアの青年たちに武道や精神論を通して軍事的な基礎を教え込んでいきます。意欲のない若者に対しては厳しく指導し、時には手を上げて「独立は自らの手で勝ち取るものだ」と諭す場面もあり、日本軍の“教育者”としての側面が強調されていました。
やがて日本の敗戦が決定し、オランダおよびイギリスの連合軍が再びインドネシアに上陸することになります。インドネシアの青年たちは、日本軍が持つ武器の提供を懇願し、日本兵たちもそれに応じる形で装備を引き渡します。しかしその直後、日本軍の指導者たちは連合軍に拘束され、厳しい拷問を受けた末に自決したり。
物語後半では、主人公が現地ゲリラ部隊の一員としてインドネシア独立戦争に身を投じていき、戦闘の中で仲間たちが次々と命を落としていき、やがて主人公も銃撃を受けて倒れます。彼の死を悼むインドネシア人たちの姿でおしまい。
本作は、白人による植民地支配に抗い、アジアの自由を求めて戦った“勇敢な日本兵”の姿を描こうという意図が随所に見受けられました。しかしながら、その演出がやや過剰で、感動を強引に引き出そうとする「お涙頂戴」的な展開が目立ち、結果として観客との距離を広げてしまっているように感じました。
特に戦闘シーンにおいては、なぜ戦うのか、どのような戦術で戦っているのかが十分に描かれず、ただ突撃しては倒れていくという単調な構成が繰り返されてしまいます。そのため、戦いの緊張感や展開の高揚感が希薄となり、観る者としても次第に集中力を削がれてしまいました。
また、登場人物の掘り下げが十分ではなく、死の場面が感動的に演出されてはいるものの、それまでの経緯が浅いために「誰だっけ?」と感情移入しにくいのが正直なところです。主人公自身も、日本軍の命令と現地住民の希望の間で葛藤する様子が断片的に描かれるのみで、なぜ彼がインドネシア独立のために命を懸けたのか、その心理的な変遷が曖昧なままでした。
親友の死という転機が示されはするものの、主人公の強い動機としてはやや弱く、ドラマとしての説得力に欠ける印象を受けました。さらに、登場人物が急に棒立ちのまま歌を歌い出すなど、現実感を損なうような不自然な演出もあり、鑑賞中の没入感を削いでしまう要因となっていました。
とはいえ、本作を通じて「インドネシア独立のために戦った日本人がいた」という歴史的な事実に触れることができた点は、一定の意義があると感じました。ただし、その伝え方や構成が説教臭く、メッセージ性ばかりが前面に出てしまった点は非常に惜しまれる部分です。
☆☆
鑑賞日: 2015/08/12 DVD 2024/09/23 DVD
監督 | 藤由紀夫 |
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脚色 | 石松愛弘 |
出演 | 山田純大 |
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保坂尚輝 | |
ムハマド・イクバル | |
ローラ・アマリア | |
六平直政 | |
水橋研二 | |
津川雅彦 | |
榎木孝明 |