映画【ミッドウェイ】感想(ネタバレ):戦争映画としての魅力と群像劇の奥深さ

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●こんなお話

 ミッドウェイ海戦を日米両軍がどんな感じだったかを描いた話。

●感想

 物語はドゥーリトル隊による空襲から始まり、日本軍の山本五十六がミッドウェイ攻略作戦を立案し、それに対抗するかのようにアメリカ側も動きを読み取りながら迎撃の準備を進めていくという展開。往年のハリウッド大作のように、アメリカの著名俳優が多数出演しており、その点ではクラシック映画を愛するファンにとっては見どころが多い一作になっていたように思います。特にロバート・ミッチャムやヘンリー・フォンダら往年のスターが司令官や提督として登場するシーンは、画面にただ座っているだけでも迫力があり、風格を感じさせてくれました。

 日本側の描写にも時間が割かれていて、南雲忠一や山本五十六といった実在の人物たちがしっかりと登場します。セリフの内容や軍議のやりとりも真面目なトーンで統一されており、日本の視点から見ても配慮のある作り方をしていたのではないかと感じました。特に山本五十六の人物像については、敵国の視点ながら丁寧に描写されていて、時代背景や立場を超えた人物としての深みが感じられたのは印象的でした。

 ただ、映画の前半部では、アメリカ側の若い兵士が日系アメリカ人女性と出会い、恋に落ちるというロマンス要素が差し込まれており、その流れがやや唐突に感じられる構成になっていたのも事実です。彼女がスパイではないかと疑われる展開も含めて、物語の中心線とは少し距離がある印象があり、戦史に特化して観たいと思っていた方には若干の戸惑いがあったかもしれません。

 そして物語は中盤からいよいよミッドウェイ海戦へと進んでいきます。空母艦載機による急降下爆撃や、海上を埋め尽くす艦隊の姿は迫力がありましたが、空戦の映像については様々な素材が使われていたようで、カットごとの質感や色合いにばらつきがあり、連続性にやや違和感が残る部分もあったかと感じました。空母のデッキでの発艦シーンや、海上での駆け引きも臨場感ある描写ではあるものの、全体として作戦の流れが掴みにくく、日米双方の司令部が頻繁に切り替わる中で、どちらがどのタイミングでどう動いているのか、理解が難しい構成になっていたように思います。

 特に空母同士の駆け引きという緊張感がもう少し整理されて伝わるようになっていれば、クライマックスに向けての盛り上がり方も変わっていたのではないかと思います。映画全体の長さとしては130分ほどありましたが、戦略的な動きと人物描写が交互に描かれるなかで、観る側の集中が持続しづらい構成だったように感じました。

 それでも、戦史に関心のある方にとっては、当時の軍事的背景や、登場人物たちの立場や判断の違いを映像として観られるという点で、貴重な映画体験になるのではないでしょうか。空母という巨大兵器同士が海上でぶつかり合うミッドウェイ海戦という歴史的な戦闘をスクリーンで再現するという試みにおいて、さまざまな視点での描写が盛り込まれていることは間違いなく、歴史を振り返る入り口としても価値のある一作だったと感じています。

☆☆

鑑賞日: 2015/10/22 Hulu

監督ジャック・スマイト 
脚本ドナルド・S・サンフォード 
出演チャールトン・ヘストン 
ヘンリー・フォンダ 
グレン・フォード 
三船敏郎 
ロバート・ミッチャム 
ジェームズ・繁田 
ロバート・ウェバー 
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