●こんなお話
明治政府を転覆しようとするに立ち向かうために京都に行く剣心の話。
●感想
明治維新からしばらくの時が流れ、緋村剣心は神谷道場で穏やかな毎日を送っていた。不殺の誓いを胸に新しい時代を歩み始めた剣心だったが、その平穏は長くは続かない。明治政府の内務卿・大久保利通から呼び出された剣心は、日本の未来を揺るがしかねない新たな脅威について知らされる。
その人物こそ、かつて幕末の混乱期に政府のため暗躍した人斬り・志々雄真実だった。政府は戦いが終わると、秘密を知り過ぎた志々雄を始末しようとしたが、彼は奇跡的に生き延びる。そして全身に深い火傷を負いながらも、明治政府への激しい憎しみを胸に京都で勢力を拡大していた。
政府は討伐隊を何度も送り込んだものの、結果は失敗の連続だった。もはや志々雄を止められる人物は剣心しかいないと考えた大久保は討伐を依頼する。しかし剣心は、再び剣を振るうことへの葛藤を抱え、すぐには答えを出せずにいた。
そんな矢先、大久保は志々雄配下の瀬田宗次郎によって命を奪われる。この事件をきっかけに、剣心は自らの過去と向き合い、人々を守るため京都へ向かう決意を固める。
京都へ向かう旅の途中で、剣心は御庭番衆の少女・巻町操と出会う。操は行方知れずとなった四乃森蒼紫を探し続けており、二人は自然と行動を共にするようになる。その頃、京都では志々雄が配下の十本刀を集めながら、ある壮大な計画を静かに進めていた。
京都へ到着した剣心は、操に導かれて御庭番衆の拠点・葵屋を訪れる。そこで頭領の翁や仲間たちと出会い、新たな協力者を得ながら志々雄一派の動きを追い始める。
一方で、志々雄の部下である刀狩の張は、新井赤空最後の刀を求めて新井青空のもとを訪れる。人質を取られた青空一家を救うため、剣心は折れた逆刃刀のまま張との戦いに挑む。不利な状況に追い込まれながらも、不殺を貫く剣心の信念に心を動かされた青空は、父が遺した新たな逆刃刀を託す。
やがて志々雄の計画が動き始め、京都市内は大混乱に包まれる。夜空を彩る花火を合図に各地で火の手が上がり、警察や御庭番衆、そして剣心たちは人々を守るため奔走する。薫や左之助、弥彦もそれぞれの持ち場で戦いに身を投じ、京都全体が戦場へと変わっていく。
混乱の中では、操が探し続けていた蒼紫も姿を現す。しかし、かつて仲間だった蒼紫は大きく変わり果てており、翁との悲しい対決が繰り広げられる。その出来事は操だけでなく、剣心たちにも大きな衝撃を与える。
さらに剣心と斎藤一は、京都で起きた騒動そのものが志々雄の真の狙いではないことに気付く。京都で政府の目を引きつけ、その隙にさらに大きな計画を実行しようとしていたのである。
その頃、薫は宗次郎に連れ去られ、剣心は単身その後を追う。たどり着いた先には、志々雄一派の本拠地となる巨大戦艦が待ち受けていた。薫が海に突き落とされて、助けに飛び込む剣心だったが、砂浜に打ち上げられた剣心を男がかつぎあげておしまい。
シリーズの魅力であるアクションは、今作でも期待を裏切りませんでした。村を襲撃した志々雄一派との殺陣をはじめ、十本刀との戦いはどれも迫力があり、スピード感と緊張感にあふれています。実写作品とは思えないほど完成度の高いアクションが続き、この映像を観られただけでも満足できる一本でした。
一方で、物語については少し整理しきれていない印象を受けました。前後編の前編という事情もありますが、新たな登場人物が一気に増え、それぞれの背景や関係性、対立構造を描かなければならない一方で、見せ場となるアクションにも多くの時間が割かれています。そのため、一人ひとりの心情や成長が十分に描かれたとは感じられず、ドラマよりも展開を優先しているように思えました。
特に気になったのは、剣心と志々雄の過去の関係です。劇中では、剣心が鳥羽・伏見の戦いを最後に人斬りを辞めたと語られます。しかし、その後に志々雄が剣心の後任として暗躍し、戦後すぐに政府から始末されかけたという説明が続くため、時系列が少しわかりにくく感じました。幕末の出来事を知っている方ほど、「志々雄が人斬りとして活動していた期間はいつだったのだろう」と疑問を抱くかもしれません。
また、東京で築いた穏やかな暮らしを捨て、京都へ向かう決断も比較的あっさり描かれていました。剣心にとっては人生を左右するほど大きな決断だったはずなので、この葛藤をもう少し丁寧に描いていれば、京都へ旅立つ場面の重みがさらに増したように感じます。この部分だけでも一本の物語になりそうなテーマだけに、少し惜しく思いました。
左之助についても少々気になる点がありました。豪快な性格は彼らしい魅力ですが、終始怒鳴っている場面が多く、なぜ周囲と良好な関係を築けているのかが伝わりにくかったです。もう少し仲間との掛け合いや人柄が見える場面があれば、より親しみやすいキャラクターになっていたかもしれません。
物語の中盤では、剣心の逆刃刀が折られるという非常に象徴的な出来事が描かれます。この場面は主人公が大きく挫折する重要な転機ですが、その後の立ち直りや精神的な変化は少し駆け足に感じました。不殺の信念を貫くのか、それとも現実の厳しさを受け入れるのかという葛藤をもう少し掘り下げていれば、主人公が再び立ち上がる姿に、より大きな感動を覚えたように思います。
さらに、志々雄一派は剣心を何度も追い詰めながら、とどめを刺さない場面が続きます。物語を続けるための演出ではあるものの、その理由が劇中で十分に説明されないため、少しご都合主義に感じてしまいました。
もう一人、印象的だったのが伊勢谷友介さん演じる四乃森蒼紫です。江戸無血開城の際に部下を失った過去が描かれ、その経験から幕府や新政府への強い執着があるのかと思いました。しかし、彼が執着するのは「最強」である剣心との決着であり、その心境の変化には少し戸惑いました。蒼紫の内面がもう少し描かれていれば、彼の行動にも納得しやすかったように思います。
蒼紫と翁の対決は、今作のアクションの中でも特に見応えがありました。田中泯さんと伊勢谷友介さんが見せる緊張感あふれる立ち回りは非常に印象的で、この作品屈指の名場面だったと思います。ただ、その戦いが志々雄との対決とは直接結び付かないため、本筋との関係性が少し薄く感じられた点は気になりました。
また、十本刀は個性的な人物が数多く登場しますが、前編ということもあり、名前や能力を十分に覚える前に物語が進んでしまいます。「十本刀を招集しろ」という盛り上がる場面はあるものの、それぞれの人物像を深く知る前に終わってしまった印象がありました。後編での活躍を前提とした構成だったのだと思いますが、前編だけでは物足りなさも残ります。
クライマックスでは、薫がさらわれたかと思えばすぐに海へ落とされ、剣心も迷わず飛び込みます。しかし、志々雄たちはそのまま二人を追撃することなく立ち去るため、「なぜ薫をさらったのか」「なぜここで決着をつけなかったのか」という疑問は残りました。続編へつなぐための終わり方とは理解しつつも、もう少し納得できる流れがあれば、さらに引き込まれたように思います。
ドラマ部分では疑問を感じる場面が少なくありませんでしたが、アクションの完成度は非常に高く、大画面で観る価値を十分に感じられる作品でした。そして、物語はまだ決着がついておらず、多くの因縁を残したまま後編へ続きます。ラストには福山雅治さん演じる比古清十郎も登場し、一気に空気が変わる演出には思わず期待が高まりました。前編単体では消化しきれない部分もありましたが、後編と合わせて一本の物語として楽しみたくなる作品でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2014/08/02 TOHOシネマズ南大沢 2015/04/11 TSUTAYA TV 2026/07/07 U-NEXT
| 監督 | 大友啓史 |
|---|---|
| 脚本 | 藤井清美 |
| 大友啓史 | |
| 原作 | 和月伸宏 |
| 出演 | 佐藤健 |
|---|---|
| 武井咲 | |
| 伊勢谷友介 | |
| 青木崇高 | |
| 蒼井優 | |
| 神木隆之介 | |
| 土屋太鳳 | |
| 田中泯 | |
| 宮沢和史 | |
| 小澤征悦 | |
| 大八木凱斗 | |
| 滝藤賢一 | |
| 三浦涼介 | |
| 丸山智己 | |
| 高橋メアリージュン | |
| 村田充 | |
| 屋敷紘子 | |
| 原勇弥 | |
| 山田崇夫 | |
| 島津健太郎 | |
| 山口航太 | |
| 江口洋介 | |
| 藤原竜也 | |
| 福山雅治 |

