●こんなお話
災害のようにやってくるゴジラを特生自衛隊のゴジラ兵器の機龍で迎え撃つ話。
●感想
ゴジラの骨を元に開発されたメカゴジラ「機龍」。その名の通り、過去のゴジラの記憶を宿したような新型兵器が再び東京に出現した怪獣ゴジラと激突する。物語は、1954年版『ゴジラ』を下敷きにした世界観のなかで進行し、新たに登場する女性総理のもと、自衛隊や科学者たちが一致団結して怪獣災害に立ち向かっていく。
冒頭からゴジラの熱線が炸裂し、街に危機が迫る。一般市民が巻き込まれかけるその瞬間、機龍が体当たりで割って入ってくるというヒーロー的登場。連射されるミサイル、空を切る機龍の動き、迫力ある格闘戦といった見せ場が次々と用意されていて、視覚的にも楽しい展開が続く。中でも「アブソリュートゼロ」という名の必殺兵器を撃てるかどうかの駆け引きは、手に汗握るような構成になっていました。エンターテインメントとして観客を惹きつける工夫が散りばめられていて、まさに特撮の醍醐味を味わえる時間でした。
政治家や防衛関係者が理想的な人物として描かれていて、「全責任は私が取る」という総理大臣の台詞や、迷いなく機龍出動を命じる決断など、現実とは違ったスピード感や潔さがあって、フィクションの中の清々しさが感じられたのも印象深かったです。女性総理という設定も、当時としては未来を先取りしているようなアプローチで、目を引くポイントの一つになっていたと思います。
一方で、人間ドラマのパートについては個人的には入り込めず、やや置いてけぼりの感覚を覚える部分もありました。冒頭で機龍が暴走し、主人公の操縦ミスによって仲間が命を落としたという過去を背負った設定など、分かりやすいドラマの仕込みはあるものの、それがあまり深く掘り下げられることもなく、やや表面的に感じてしまった印象が残ったり。また、博士とその娘との会話で「大人は命が大事だというけれど、メカゴジラの気持ちは?」というセリフが飛び出すあたりも、テーマとしてはわかりやすいながら、説得力に欠けてしまっていたかもしれないです。子ども向け作品の中で、倫理的なメッセージを盛り込もうとする意図は伝わってきますが、もう少し描写に奥行きが欲しかったという思いもあります。
また、機龍がゴジラの咆哮によって制御不能となり暴走し、都市を破壊してしまうくだりなどは、どこか『エヴァンゲリオン』的な雰囲気も漂っていて、時代の空気を映し出すような一面もあったのではと感じました。
とはいえ、全体としては90分というコンパクトな尺の中でスピーディに展開していくため、テンポよく物語が進んでいくのは好印象でした。ミレニアムシリーズの中でも、視覚的な魅力と戦闘シーンの爽快感が際立っていて、気軽に楽しめる一本だと思います。
☆☆☆
鑑賞日: 2016/07/27 Hulu 2021/07/10 NETFLIX
| 監督 | 手塚昌明 |
|---|---|
| 脚本 | 三村渉 |
| 出演 | 釈由美子 |
|---|---|
| 宅麻伸 | |
| 中尾彬 | |
| 水野久美 | |
| 喜多川務 | |
| 石垣広文 | |
| 高杉亘 | |
| 友井雄亮 | |
| 中原丈雄 | |
| 上田耕一 | |
| 白井晃 | |
| 六平直政 | |
| 森末慎二 | |
| 萩尾みどり | |
| 中村嘉葎雄 | |
| 永島敏行 | |
| 田中美里 | |
| 谷原章介 | |
| 村田雄浩 | |
| 松井秀喜 | |
| 吹越満 | |
| 渡辺哲 | |
| 江藤潤 | |
| 田中実 | |
| 杉作J太郎 | |
| 柳沢慎吾 | |
| 藤山直美 | |
| 水野純一 | |
| 大城英司 |



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