●こんなお話
博士が死体を復活させようとするのと復活した怪物の話。
●感想
氷に閉ざされた海を進む船の乗組員が、凍えるような外気の中で重傷を負った男を発見する。男は極限状態にもかかわらず、何かに追われているような怯えた目をしていた。救助されて間もなく、彼を追うようにして船の周囲には不気味な影が迫り、それが異様な存在であることが暗に示される。船員たちは、男が何者で、何が彼を追い詰めているのかを探るように事情を聞き、その語りを通して物語が遡っていく。
19世紀初頭の東ヨーロッパ。ヴィクター・フランケンシュタインは、医師である父親の厳しい価値観に縛られながらも、幼いころに母の死を目の当たりにし、生命と死の境界に強い関心を抱くようになる。青年へと成長するにつれ、医学的探求心は次第に常軌を逸し、死者を再び生者へと戻すという禁断の領域へ踏み込んでいく。
その執念にも似た熱意は医学界から異端視されるが、ヴィクターは意に介さず、死体の断片と当時可能な限りの技術を用いて、新たな生命を“創造”する準備を進める。
彼を支援するスポンサー、ハーランダーの援助によって研究室を確保したヴィクターは、雷が鳴り響く荒れた夜に装置を稼働させる。ほどなくして、つぎはぎの身体を震わせながら意識を得た生命体が息を吹き返す。生まれ落ちたばかりのその存在を前に、ヴィクターは創造主として向き合うが、未知の反応を見せる怪物に恐れを抱き、安定しない情緒のまま育てようとする。
やがて怪物は、ハーランダーの姪であり、ヴィクターの弟と婚約しているエリザベスと出会う。言葉はうまく交わせずとも、ぎこちない交流が芽生え、彼の内側にある優しさがわずかに表れていく。しかし、怪物の存在そのものに危険を感じたヴィクターは、研究室を自らの手で焼き払ってしまい、怪物は逃げ出すことを余儀なくされる。
外の世界へ放たれた怪物は森の中で身を潜めながら、小屋に暮らす家族を遠くから見守り、影ながら助けていく。薪を運んだり、家族が困っているときには密かに力を貸すようになり、盲目の老人とは心を通わせ友人として接する。しかし、狼の襲撃を受けて老人が負傷し、怪物は怒りと悲しみを抱えながら再び彷徨い始める。
ヴィクターの弟の結婚式が近づくなか、怪物はヴィクターの前に現れ、自分と同じような存在を作るよう求める。孤独に満ちた願いが拒絶されたことで緊張は高まり、誤って放たれた銃弾がエリザベスを傷つけ、弟も深手を負う。その際に弟が発した「怪物は兄さんだ」という言葉は、ヴィクターの胸に重くのしかかる。
物語は再び氷の海へと戻り、怪物は傷ついたヴィクターを助けながら船を氷から押し出し、航行を手伝う。遠ざかってゆく船を見送りながら、怪物は静かにたたずみ、おしまい。
2時間半という長さがありながら、ヴィクターと怪物の関係に重きを置いて丁寧に描こうとしていた点は良かったと思います。怪物のほうがむしろ純粋で、人間のほうが残酷な行動を取ってしまうというテーマは過去の作品でも多く扱われてきましたが、今作では視覚的な美術や衣装の質感がそれを後押ししていて、映像としての魅力が強く出ていた印象です。
怪物が力強く暴れまわるシーンは迫力があり、狼との戦いや人間をはじき飛ばす動きも見応えがありました。身体の重さや存在感がしっかり伝わる演出で、アクションとして観ても満足感が得られる仕上がりだと感じました。
一方で、物語としては「怪物のほうが人間らしい」という主題が何度も繰り返されているため、既視感のある展開が続く部分はありました。それでも怪物が家族を助け、盲目の老人と交流し、少しずつ世界を理解しようとする描写には温度があり、丁寧に積み重ねていく姿勢は好感が持てました。
美術や背景、衣服の雰囲気が時代の空気をしっかり映し出していて、物語の重さを視覚的に支えている点も魅力的でした。怪物の孤独やヴィクターの狂気に寄り添うような色彩設計もあり、全体的に映像表現の力がしっかり伝わってくる作品だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2025/12/13 NETFLIX
| 監督 | ギレルモ・デル・トロ |
|---|---|
| 脚本 | ギレルモ・デル・トロ |
| 原作 | メアリー・シェリー |
| 出演 | オスカー・アイザック |
|---|---|
| ジェイコブ・エロルディ | |
| ミア・ゴス | |
| クリストフ・ヴァルツ | |
| フェリックス・カメラー | |
| ラース・ミケルセン | |
| デヴィッド・ブラッドリー | |
| クリスチャン・コンヴェリー |

