●こんなお話
癌治療で詐欺に遭ったジグソウが騙した詐欺師たちにリベンジする話。
●感想
物語は、主人公が病院でMRI検査を受けた結果、「脳腫瘍」という診断を下されるところから始まります。絶望感の中で参加したセラピーで、偶然出会った男性から「新しい治療法を受けて完治した」と告げられ、その情報源であるウェブサイトのURLを教えられます。半信半疑ながらも一縷の望みに賭けて、主人公はその治療法の拠点があるというメキシコへと向かいます。
到着後、突如として覆面の男たちに拉致されるという衝撃的な展開が起こりますが、これは「他の製薬会社に知られないようにするための予防措置」だったと説明され、主人公は不安を抱きつつも受け入れます。施設では、代表者や医師、看護師、そして「手術を終えたばかり」という患者と面会。地元の少年と自転車修理をきっかけに心を通わせるシーンもあったり。
手術が成功したとの報告を受けた主人公は帰国しますが、再びメキシコの施設を訪れた際に真実が明らかになります。そこにはスタッフの姿はなく、施設は荒れ果て、頭部にも手術痕はなく、全てが詐欺であったと悟る。
そこから一転、主人公は復讐の鬼と化し、自らを騙した関係者たちを次々に拉致。秘密の場所に集め、“ゲーム”と称した拷問を始めます。生存の条件は、極限状態において自らが苦しみ抜くこと。目玉吸引装置、自切装置、足切断による出血装置、脳組織摘出装置、放射線照射装置、毒ガス部屋など、いずれも凄惨で想像を絶する苦痛を伴う装置が登場し、まさにジャンル映画として面白かったです。
途中で、かつて同じ“治療”を受けたと語る男が現れ、事態を止めようとするかに見えますが、実は詐欺側の一員であり、主人公に銃を向けて反撃。さらに地元の少年までもがゲームに巻き込まれ、装置に繋がれてしまいます。
最終盤では、詐欺師たちが金を取り返そうとするも、部屋には金などなく、逆に毒ガスの罠にかかり、互いに殺し合いに至ります。一方、少年と主人公は互いに身を挺し、自己犠牲の精神を示したことで装置が停止。結果、主人公・助手・少年の3人で外の世界に脱出しておしまい。
本作の見どころは、やはり極限の痛みと倫理観を問う過酷な“装置”の数々。どの装置も観ている側に痛覚が伝わってくるような緊張感があり、バイオレンス映画としては高水準だと思います。目を背けたくなる描写も多くありますが、ジャンルファンにとってはたまらない内容と言えるでしょう。
一方で、物語前半の展開、すなわちメキシコへ行って治療を受けるまでのパートはやや冗長で、「早く装置パートにならないか」と感じてしまうほど、テンポに課題を感じました。また、シリーズおなじみのカタルシスである“どんでん返し+種明かし+テーマ曲”の演出も控えめで、やや不完全燃焼気味なラストだったのは惜しいポイントです。
とはいえ、主人公が持つ「自らの倫理に従って裁きを下す」という一貫した行動原理は、サイコパス的でありながらも不思議と感情移入を誘います。悲しみと怒りが渦巻く中、自らの信念を突き通す姿勢に、観客としてある種の共感や理解を覚えてしまうという意味では、非常に興味深い作品でした。
☆☆
鑑賞日:2024/10/19 イオンシネマ座間
監督 | ケヴィン・グルタート |
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脚本 | ケヴィン・グルタート |
ジョシュ・ストールバーグ | |
ピーター・ゴールドフィンガー | |
製作総指揮 | ジェームズ・ワン |
リー・ワネル |
出演 | トビン・ベル |
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ショウニー・スミス | |
スティーヴン・ブランド | |
シヌーヴ・マコディ・ルンド | |
マイケル・ビーチ | |
レナータ・ヴァカ | |
オクタビオ・イノホサ |