映画【死刑にいたる病】感想(ネタバレ):『殺人犯の手紙』が導く真相――大学生が闇にのまれる心理サスペンス映画

Lesson in Murder
スポンサーリンク

●こんなお話

 連続殺人で捕まった人から手紙が来て1件冤罪があるので調査して欲しいということで調べる話。

●感想

 ある連続殺人鬼が静かに水路に何かを撒いている、不穏な冒頭シーンから始まり。その直後、舞台は大学生の主人公へと移り、彼は祖母の葬儀に出席しています。葬儀の場では、何も決断できずに頼りない母親と、抑圧的で威圧感のある父親に嫌気がさしている様子が描かれ、主人公の家庭環境が描写されていきます。 

 そんな折、主人公のもとに一通の手紙が届きます。差出人は、現在収監中の連続殺人鬼。かつて町で人気を博していたパン屋の店主であり、主人公もかつて客として通っていた人物でした。彼は自身が9件の殺人容疑で起訴されている中の「1件が冤罪である」と主張し、その事件について調べてほしいと訴えてきます。

 主人公は殺人鬼の弁護士事務所でアルバイトとして関わりながら、事件の真相を探ることに。被害者の事件現場を訪れ、近隣住民や関係者から当時の話を聞いて回る過程が続きます。被害者はいずれも優等生で真面目な高校生たち。共通点として「爪を剥がされる」という凄惨な殺され方をしていたことが回想されますが、その中で唯一、冤罪だとされる20代女性だけは殺人鬼の「好み」から外れているという点に違和感が残ります。

 さらに、殺人鬼の裁判で証言台に立ったある人物を調査していくうちに、その人物も少年時代に殺人鬼に洗脳されていたという事実が判明。その人物が冤罪とされる20代被害者にストーキングしていた疑惑も浮上し、真犯人なのではないかと主人公は疑い始める。

 調査が進む中で、主人公はなんと母親と殺人鬼が一緒に映っている古い写真を発見。その瞬間、自分の父親こそが真の殺人犯なのではという疑念に取り憑かれていきます。この疑念は主人公自身の精神にも影響を与え、周囲の大学の友人たちから「変わった」と言われたり、口論の末に相手を殺しかけてしまうなど、徐々に彼が殺人鬼と精神的に“同化”していく過程が描かれます。

 物語の終盤、主人公は冤罪被害者の事件現場を再び訪れ、そこでかつて殺人鬼に洗脳されていた男性と遭遇します。彼の口から、真相が語られることに。実は、殺人鬼はその男性に罪悪感を植え付け、彼に“選ばせた”20代の被害者を殺害していたという事実。そして、主人公の母親もかつて死産を経験しており、それを通じて殺人鬼と深い繋がりがあったことも明らかになる。

 最後に、主人公は恋人の家を訪ねます。すると、恋人のもとにも殺人鬼から手紙が届いていたことが発覚し、彼女は「あなたの気持ちがわかる」と語ります。殺人鬼と主人公の奇妙な精神的リンクが浮かび上がりながら、おしまい。

 作品を通じて、面会室でガラス越しに行われる殺人鬼との緊迫した対話シーンは、このジャンルにおける王道的な魅力をしっかり押さえており、終始ハラハラドキドキさせられました。殺人描写に関しては、非常に暴力的で痛々しい描写も多く、観ていて辛いと感じる場面も少なくありませんでしたが、それも含めて本作のリアリティと緊張感を強めていたと思います。

 「真実を追う者が、いつの間にか闇に飲み込まれていく」というサスペンスの王道を踏襲しながら、加害者と被害者、家族、社会の関係を丁寧に編み込んだ構成は秀逸で、120分間、張り詰めた空気の中で展開するストーリーに一瞬も目を離せませんでした。

☆☆☆

鑑賞日:2024/10/14 NETFLIX

監督白石和彌 
脚本高田亮 
原作櫛木理宇
出演阿部サダヲ 
岡田健史 
岩田剛典 
宮崎優 
鈴木卓爾 
佐藤玲 
赤ペン瀧川 
大下ヒロト 
吉澤健 
音尾琢真 
岩井志麻子 
コージ・トクダ 
中山美穂 
タイトルとURLをコピーしました