映画【生きる LIVING】感想(ネタバレ):余命半年と向き合った男の優しき決断

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●こんなお話

 余命半年の宣告を受けた市民課の課長が今までとこれからの人生を見つめなおして一念発起して講演を造る話。

●感想

 物語は通勤ラッシュの朝、汽車を待つホームで新入りの男性職員が、先輩や上司と一緒に出勤するところから始まる。途中で主人公の上司も別のホームから乗ってきて、黙々とした通勤風景が描かれる。

 勤務先の役所では、日々の仕事を淡々とこなしていて、市民からの公園整備の陳情に来た婦人たちも、あっさりと別の課にまわされてしまう。新人も一緒に対応するが、最終的にはたらい回しになってまた市民課に戻ってくるという、役所の典型的なループが印象的。

 そんな中、主人公が病院で検査を受けると、医師からガンで余命半年という衝撃の宣告を受ける。動揺しつつも、家族に伝えようとするが、息子夫婦の冷たい態度に気圧されて、なかなか本当のことを話せない。

 しばらく仕事を休み、バーで知り合った男性と遊びに出かけるようになる。ゲームセンターで遊んだり、映画を見たり、これまでとはまるで違う時間を過ごしていく。お金の使い方について、息子夫婦が咎めそうになるが、息子も本音を言えないまま気まずい空気が流れる。

 やがて、以前役所を辞めてウェイトレスになっていた若い女性と再会し、彼女と映画を観に行ったり、再びゲームセンターで遊んだりする。彼女からは、かつて主人公が職場で「ゾンビ」とあだ名されていたことを聞かされ、少し驚きつつも、その言葉が彼の心を動かしていく。

 そして、再び役所に戻った主人公は突然やる気を見せ、放置されていた公園整備の陳情について自ら積極的に動き始める。多くの部署にかけあい、職員たちの協力を引き出して、ついに公園の整備が実現する。

 物語の終盤では主人公の葬儀が描かれ、公園の整備に尽力した彼の功績が振り返られる。完成した公園では子どもたちが楽しそうに遊び、その様子が彼の遺志をしっかりと引き継いでいることを感じさせる。

 そしてラストシーンでは、夜の公園で一人の警官が、かつてブランコに揺られながら幸せそうな表情を浮かべていた主人公を目撃していたことを明かし、おしまい。

 オリジナルの作品とベースは共通しているが、舞台が1950年代のイギリスということで、ジェントルマンらしい所作や空気感がとても心地よかったです。100分程度の上映時間で、人生の尊さと小さな行動の意味をじっくりと描ききっていて、温かく心に残る1本でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2024/04/21 Amazonプライム・ビデオ

監督オリヴァー・ハーマナス 
脚本カズオ・イシグロ 
原作作品黒澤明
出演ビル・ナイ 
エイミー・ルー・ウッド 
アレックス・シャープ 
トム・バーク 
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