ドラマ【模仿犯】感想(ネタバレ):検事とメディアが交差する、静かな連続殺人の追跡劇

Copycat Killer
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●こんなお話

 劇場型の連続殺人が起こって事件を追う検事や刑事、マスコミ、被害者たちの話。

●感想

 マスコミに対して挑発的なメッセージを送りつけながら、連続して女性が犠牲となっていく事件が発生する。物語は、検察に所属する主人公が、この不可解な事件の真相を追いながら、次第に犯人の存在に迫っていく様子を描いていく。

 主人公の周囲には、経験豊富なベテラン刑事がいて、彼もまた自身の娘との関係に思い悩んでいる様子が描かれる。また、主人公のかつての恋人は精神分析の専門家であり、犯人の内面を読み解く役割を担っていく。さらに主人公にはテレビ局で働く弟がいて、彼の言動にはどこか不穏な雰囲気が漂っている。

 一方、事件を報道する側のメディアの動きも印象的で、テレビ局の花形キャスターが番組内で犯人と間接的に対峙するような構図になっていき、テレビ局内の制作スタッフたちも検事の捜査に協力するかたちでストーリーに絡んでいく。

 物語が進むにつれて、娘を誘拐された父親が、犯人の指示に従って行動する姿が描かれる。さらにはベテラン刑事の娘にも危機が迫るなど、各登場人物の家族や個人的背景が、次々と事件と交差していく。緊張感が途切れないまま、エピソードは続いていく。

 やがて物語の後半では、ついに真犯人の存在が明かされる。過去の出来事や、犯人の幼少期の回想シーンなどを交えながら、主人公を精神的にも追い詰めていく展開が描かれていく。

 映像面では、全体を通して非常に美しい画作りが印象的で、画面を眺めているだけでも満足感がありました。その映像美の中で、凄惨な事件の数々が描かれることで、より衝撃的な印象が残りました。女性が被害に遭う場面が何度も描かれるため、その点は視聴していて気持ちが沈むような感覚を覚えたのも事実です。

 個人的には登場人物の名前や顔を把握するのが難しく、ストーリーが進むにつれて「誰がどの立場で何をしていたのか」がやや曖昧になってしまいました。特に終盤にかけて、これまでの被害者たちが夢の中に登場する場面では、「この人は誰だったっけ?」と思ってしまい、物語に没入しきれない瞬間もありました。

 構成面においても、真犯人の登場がやや自然すぎたというか、「えっこの人だったのか」という驚きではなく、「やっぱりこの人か」というような流れで物語が進んでいった印象です。視聴者が予想を裏切られるようなサプライズが少なかったため、サスペンスとしての盛り上がりに欠ける部分があったかもしれません。

 そして何より、主人公である検事の存在がやや印象に残りづらく、物語の中心にいながらも、特に大きな行動を起こすわけでもなく、事件の流れをただ見守っているような印象がありました。感情の起伏も控えめで、視聴者としても彼に感情移入しにくく、最終的に彼が何を乗り越えたのか、という達成感も薄かったように思います。

 とはいえ、演出やテーマにはしっかりとしたものを感じることができ、現代社会における報道と加害者心理、そしてそのはざまで揺れる人々の姿を丁寧に描こうという姿勢が伝わってくる作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2023/04/24 NETFLIX

原作宮部みゆき
出演ウー・カンレン
アリス・クー
ルビー・リン
トゥオ・ツォンホァ
ジャック・ヤオ
フェンディ・ファン
キャミ―・チャン
シア・トンハン
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