ドラマ【ダーマー:モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語】(ネタバレ):事実に基づく衝撃と静かな余韻

Dahmer
スポンサーリンク

●こんなお話

 連続殺人犯や家族や被害者、遺族などを描いた全10話。

●感想

 薄暗いアパートの一室。男が誘われてやって来たその部屋には、ワインや映画が用意されていて、ひとときの寛ぎが演出されていた。しかし、その和やかな空気はすぐに一変する。主人公がナイフを取り出し、逃げようとする男性を脅して閉じ込めてしまう。男性は必死に宥めつつ、どうにか隙を見て逃走に成功。警察に保護され、主人公の部屋に戻ると、そこには無数の死体が残されていた。

 こうして始まる『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』は、アメリカ犯罪史に名を刻む連続殺人犯の姿を、10話にわたって描き出していきます。第1話から強烈な導入で視聴者を引き込み、その後は犯人ダーマーの幼少期、家族関係、そして心の闇へと物語は深く潜っていきます。少年時代の彼が両親に十分に愛されずに育った様子や、徐々に孤独を募らせていく過程などが丁寧に映し出され、異常な行動の背景に何があったのかが少しずつ明かされていきます。

 作品の前半は、ダーマーがゲイクラブなどで出会った男性たちを次々と自宅に誘い込み、そこで凄惨な事件が繰り返されていくという展開が続きます。その冷静さと異常さの対比が強烈な印象を残し、見る側の感情を複雑に揺さぶります。

 中盤以降では、被害者の一人ひとりに焦点を当てたエピソードや、隣人女性による警察への通報とその葛藤、そして捜査の過程で浮き彫りになる警察の対応の甘さなども描かれていきます。特に印象的だったのは、声を上げ続けていたにもかかわらず、繰り返し無視されてしまう隣人女性の姿です。彼女の抱く恐怖や無力感が胸に迫ってきて、物語にリアリティを加えていました。

 さらに、加害者の父親が自分の息子と向き合おうとする姿も、非常に重みのある視点となっていて、単に“異常者の犯行”で片付けることのできない人間模様が浮かび上がります。家族として、加害者をどう受け止めていたのか、そして社会との接点がどのように断たれていったのか、考えさせられる描写が多かったです。 

 このシリーズは娯楽作品という枠には収まりませんが、全10話の構成が巧みで、各エピソードごとの緊張感が非常に高く、目を離すことができませんでした。脚本や演出も過度な演出には頼らず、事実に基づく重厚なドラマとして描かれていた印象です。視聴後には、事件の背景や被害者、そして加害者の人生についてさらに知りたくなるような、強い引力を感じる作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2023/02/09 NETFLIX

監督パリス・バークレイ
カール・フランクリン
脚本ジャネット・モック
ライリー・スミス
出演エヴァン・ピーターズ
リチャード・ジェンキンス
ニーシー・ナッシュ
モリー・リングウォルド
マイケル・ラーンド
ペネロープ・アン・ミラー
ディロン・バーンサイド
タイトルとURLをコピーしました