映画【ティル・デス】感想(ネタバレ):雪に閉ざされた別荘で繰り広げられる極限サスペンス

TILL DEATH
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●こんなお話

 旦那さんがとんでもないことをしてくれてホームアローン状態になる話。

●感想

 主人公はベッドで目を覚ますと、隣には不倫相手の男性。情事の後のひとときを過ごした彼女は、いつものように仕事場へと向かう。職場では夫と顔を合わせるものの、心ここにあらずといった表情でぎこちない会話が交わされる。そんな中、エレベーターのドアが開くと、なんと不倫相手がその中に現れる。まさかの同じ職場だったという事実に、主人公も視聴者も少なからず驚きを覚える展開となっていた。

 その後、夫とともにレストランで食事をする場面へ。どこか心の距離を感じさせながらも、夫は首輪をプレゼントしたり、サプライズとして雪が降り積もる静かな湖畔の別荘へ主人公を誘い、仲直りを図ろうとする。ロマンチックな演出の中にも、どこか不穏な空気が漂っているようにも感じられる描写が続いていく。

 翌朝、目を覚ました主人公が気づくと、なんと夫と手錠で繋がれていた。驚いて「外して」と頼むも、夫は無言のまま拳銃を取り出し、自らの頭を撃ち抜くという衝撃の展開に突入する。繋がれたままの主人公は、家の中を右往左往するしかなく、電話もつながらず、車もガス欠で外界と遮断された状況に置かれてしまう。

 そこへ不倫相手が駆けつけ、主人公の異常な状況を目の当たりにして言葉を失うが、その直後、車でやってきた見知らぬ男により彼は襲撃される。ナイフで刺され命を落としてしまい、さらにもう一人の暴漢も加わって、凍てつく別荘内での“かくれんぼ”が始まる。暴漢たちは家の中にある金庫の中身を探しており、その最中にも主人公に気づき、追いかけ回す展開となっていく。

 暴漢たちは作戦の方向性の違いで仲間割れを起こし、物語はさらに混沌としていく。肝心の金庫には何も入っておらず、実は主人公が身に着けていた首輪の中にこそ、求めるものがあると発覚。首輪を切断しようとする暴漢と主人公がもみ合いとなり、そのまま氷の張った湖へと落下する。冷たい水の中で死闘が繰り広げられ、やがて水面から這い上がった主人公が一人佇むラスト。遠くからパトカーのサイレンが響き、ようやく救いが訪れるような静かな終幕を迎える。

 雪深い一軒家を舞台にしたサスペンスで、限られた空間の中で緊迫感を維持するための演出は随所に工夫が感じられました。室内という制限の中でも、暗がりや物陰の使い方によって視覚的な不安感が丁寧に演出されており、ジャンル映画として楽しめる仕上がりだったと思います。

 また、氷点下の中で繰り広げられるサバイバルと追走劇の描写には、冷たさや孤立感、そして逃げ場のなさが強く反映されており、観ている側にもじわじわと緊張感が伝わってまいりました。手錠で死体と繋がれているという物理的な制約が、サスペンスの基盤を形作っており、その設定を活かした動きの工夫が見受けられた点も魅力の一つです。

 ただ、暴漢たちの造形がやや類型的で、怖さよりもどこか間の抜けた印象を与えてしまっていたのは否めません。登場した瞬間から命のやり取りをしている割に、緊張感が持続しにくい場面も散見されました。

 また、物語の根幹にある主人公と夫との関係性、不倫に至った動機や心の揺らぎがあまり深く掘り下げられていなかったため、彼女が追い詰められても感情移入しづらくなっていたように感じます。夫の極端な行動の裏にある心理や背景がもう少し丁寧に描かれていれば、クライマックスの感情のうねりもより響いたかもしれません。

 とはいえ、限られた空間を使い、ジャンル要素を押さえた演出で最後まで見せ切った作品で、寒さが伝わるような画作りや、氷の湖でのクライマックスには目を奪われる瞬間が多くありました。

☆☆☆

鑑賞日:2023/02/09 WOWOW

監督S・K・デール 
脚本ジェイソン・カーヴィ 
出演ミーガン・フォックス 
オーエン・マッケン 
カラン・マルヴェイ 
ジャック・ロス 
アムル・アミーン 
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