●こんなお話
先天的な病気で車いす生活で母親と生活する主人公が母親に疑念を持って調べていく話。
●感想
病気の説明テロップが映し出され、未成熟児が蘇生処置を受け、その様子を母親らしき人物が見守る場面から物語は始まる。続いて描かれるのは主人公の家庭での生活。彼女は車いすでの生活を送りながら、母親と共に大学合格の知らせを心待ちにしている。母から愛情深く接してもらい、楽しげに暮らす姿が描かれるが、その日常には徐々に不穏な影が差し込んでいく。
母親から渡された新しい薬を飲んでいた主人公は、ふと薬の宛名が自分ではなく母親になっていることに気づく。不安を覚えた彼女が問いただすと、母は「それはレシートよ」と説明する。疑念を拭えず家中を探し回り、道具を使って高い棚を開け、ようやく自分の名前が書かれた薬を見つけて安心するが、そのラベルをはがすと再び母親の名前が現れる。主人公の不安は確信へと変わっていく。
さらに今まで使えていたインターネットが突然遮断され、外部との連絡が困難になる。映画館に行きたいと母に頼んで外出の機会を得た彼女は、途中で立ち寄った薬局で薬を調べてもらう。すると「これは人間用ではなく犬用の薬です」と告げられ、驚愕する。そこに母親が現れ、事態はさらに緊迫していく。
次に気づいたとき、主人公は自宅に閉じ込められていた。窓から脱出し、屋根を伝って再侵入を試みるが、階段は壊されていて転落。ところがその衝撃でわずかに足が動くことに気づく。逃走を試みる途中、偶然出会った郵便局員の青年に助けられるが、母親が現れ青年を注射で昏倒させ、再び連れ戻されてしまう。
地下室に監禁された主人公は、母親の本当の過去を知る。かつて母は生まれたばかりの子どもを亡くし、その後、新生児を誘拐して自分の子として育てていたのだ。主人公は自分が実の娘ではないと悟り、謎の注射を打たれそうになるも、自ら劇薬を飲んで抵抗する。病院へ運ばれ、看護師に助けを求めようとするが、母が外へ連れ出そうと迫る。そこへ警備員が駆けつけ、母親は射殺され、主人公はようやく救い出される。
そして7年後。主人公は自らの暮らしについて語り、入院中の母を見舞う。薬を前に「薬の時間よ」と言いながら母に差し出す姿が描かれ、物語は幕を開けた始まりとは対照的な静けさで終わる。
作品全体は90分のコンパクトな密室スリラーとしてテンポよく進み、ハラハラドキドキを存分に味わえる仕上がりでした。科学の知識を活かしてDIYで危機を突破する主人公の姿は見応えがあり、知恵と勇気で立ち向かう強さが印象的です。主演の二人による緊迫した芝居の応酬は迫力があり、物語を一層盛り上げていました。途中で登場する郵便局員の青年も真っ直ぐな好青年として魅力的で、物語に安心感を与えていたと思います。シンプルながらもスリルと人間ドラマの両面を楽しめる作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2022/12/23 Amazonプライム・ビデオ
監督 | アニーシュ・チャガンティ |
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脚本 | アニーシュ・チャガンティ |
セブ・オハニアン |
出演 | サラ・ポールソン |
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キーラ・アレン | |
パット・ヒーリー | |
サラ・ソーン | |
トニー・レヴォロリ |