●こんなお話
殺人犯を専門にしている大学教授が未解決事件を調べながら、何やら隣人が怪しいってなっていく話。
●感想
映画全編にみなぎる何ともいえない不気味さ緊張感はさすがの黒沢清ワールドでした。その世界観を描いている撮影の芹沢明子さんの画づくりは神業レベルなのではないかと、それを見ているだけで満足な130分でした。主人公たちの後ろを歩くエキストラさんたちでさえ不気味に思えてくる世界。その他にも音響や羽深由理さんの音楽も不気味さを倍増させていると思いました。
エンタテイメント色が強くなっている黒沢清監督作品ですが、その分、登場人物の行動にクエスチョンマークが出てきてしまう部分もありました。
怪しい隣人である香川照之さんが最初から怪しくて、そのまんま最後まで怪しいとかも面白味に欠けますし。彼がどうやって周りの人間をマインドコントロールしていくのが怖いのかと見ていったら、なんかよくわからないクスリでみんなを操っちゃったり。そもそも彼が怪しい人間として登場しますが。主人公夫婦も最初から怪しい行動をしていて、彼らが引っ越す前の部分も描かないといけないのではないかと思ったりもしました。奥さんはなぜ引っ越しのあいさつで手作りチョコレートを渡すのか。シチューを作りすぎたからと大量のシチューを持っていくのか。主人公も主人公で相棒に「落ち着け」と言っておきながら、事件の関係者に詰め寄ったり、「事件を調べるのは趣味だから」「面白い」など失礼な発言を最初からしていて、怪しい隣人以外の全員が怪しいという。
主人公が話を聞きに行く、失踪事件の生き残りの女性もなぜ彼女だけ助かったのか? とか彼女も実は操られていて…。とかだったらもっと面白くなりそうなのに、途中でフェードアウトしちゃったりするのも残念でした。そしてやっぱりどうしても警察が無能に見えたりも気になる部分でした。そういうのも黒沢ワールドとして消化していいのかどうか戸惑いながら見終わりました。
とはいえ、役者さんたちはみなさん素晴らしいですが、犬までお芝居をしていて凄いのと。何より「風」まで芝居をさせているのがお見事なサイコサスペンスでした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2016/06/29 チネチッタ川崎
監督 | 黒沢清 |
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脚本 | 黒沢清 |
池田千尋 | |
原作 | 前川裕 |
出演 | 西島秀俊 |
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竹内結子 | |
川口春奈 | |
東出昌大 | |
香川照之 | |
藤野涼子 |
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