●こんなお話
昭和二十三年に起こった銀行で行員やその家族を毒殺した事件を描いた話。
●感想
冒頭でナレーションとともに閉店後の銀行に衛生局を名乗る男が現れて、店長代理に「赤痢が近所で発生して進駐軍の命令で予防薬を飲むように」ということで自分が先に薬を飲む。そして行員や家族が薬を飲んで苦しんで倒れていくというのを淡々とナレーションとともに見せていって、その後の捜査とマスコミの真相究明とが描かれていきます。
中盤くらいまでは記者たちが使われた毒が旧日本軍関係者しか使えないということで満州での生体実験を行っていた731部隊が怪しいと迫るけど、アメリカ軍から「それ以上動かないように」と圧力がかけられて報道できなくなる。当時の東京裁判の関係でアメリカとソ連のあいだでいろいろあって、731部隊は掘り下げないようにという真実というより国家の都合が優先される。
犯人の名刺からいきなり画家の男性が容疑者となって、中盤以降は彼の裁判と同時に彼の自白と彼が犯人という目的に向かっての取り調べの無茶苦茶さが描かれていきます。最初は731部隊犯行説でいっていたのに突然画家犯行説が定説になっていく怖さ。容疑者が東京駅に連行されてやってきたときに2万人の大衆が押し寄せる怖さ。家族の家に投石されて普通に暮らせない日本。エピローグでアメリカへ渡る決断が苦しいです。
そして当時の検事の取り調べの無茶苦茶さ。容疑者の精神状態もおかしくなって自供も無茶苦茶なのに、「後でどうにでもなる」と検事がそのまま答えありきの証言。GHQや当時の世相や警察、裁判所などのシステムの不完全さが伝わってくる淡々とした映像だけど熱さは伝わってきました。
帝銀事件の犯人は他にいるという訴えは伝わってくるものではありますが、事件の生存者と記者の恋愛とか必要だろうか? と思えるエピソードもありました。
☆☆☆☆
鑑賞日:2021/11/22 Amazonプライム・ビデオ
監督 | 熊井啓 |
---|---|
脚本 | 熊井啓 |
出演 | 信欣三 |
---|---|
高野由美 | |
柳川慶子 | |
鈴木瑞穂 | |
庄司永建 | |
内藤武敏 | |
井上昭文 | |
木浦佑三 | |
平田大三郎 | |
藤岡重慶 | |
平田未喜三 | |
小泉郁之助 | |
伊藤寿章 | |
高品格 | |
松下達夫 | |
陶隆 | |
草薙幸二郎 | |
長尾敏之助 |