映画【戦場のメリークリスマス 4K 修復版】感想(ネタバレ):ジャワ捕虜収容所で繰り広げられる宗教と死生観の激突ドラマ――名曲と共に胸を打つ名作

Merry Christmas Mr. Lawrence
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●こんなお話

 日本軍捕虜収容所で日本兵イギリス兵の愛憎の話。

●感想

 ジャワの捕虜収容所を舞台に、日本兵とイギリス人捕虜が宗教観や死生観の違いを激しくぶつけ合う物語です。

 冒頭、オランダ兵捕虜を襲おうとして捕まった朝鮮人軍属をハラ軍曹が独断で処断しようとする場面から始まります。ハラ軍曹とイギリス人捕虜ロレンスは、「なぜ捕まったのに自決しないのか」「捕虜になることは恥ではない」といった価値観の対立を繰り返しながらも、その間に日本軍によるジュネーブ条約違反の捕虜虐待の現実も描かれます。

 物語の中盤では、ヨノイ大尉がイギリスの空挺部隊出身のゲリラ戦士セリアズの裁判に関わり、彼を処刑せず収容所に連れ戻して治療させるという行動を取ります。ヨノイがそこまでセリアズに執着する理由は、ロレンスとの会話から二・二六事件に参加できなかった過去にあることが明かされ、セリアズとの対立や反抗に翻弄される姿も印象的です。

 独房に入れられた捕虜の少年時代の回想や、イギリス校内の厳しいいじめの描写もリアルで、収容所の閉塞感とは異なる新たな視覚的世界が展開されます。やや長めですが興味深い部分です。

 また、ハラ軍曹が独断でセリアズとロレンスを独房から出して「自分はサンタクロースだ」と酔っぱらうシーンや、捕虜の中に兵器の専門家を出すよう命令し、それを拒否されて激昂し殺害を試みる場面なども見どころです。特にデヴィッド・ボウイが出演するキスシーンの美しさは忘れがたい瞬間で、その後の讃美歌の流れも深く印象に残ります。

 激しい戦闘や派手な見せ場は少ないものの、俳優以外のキャストも巧みに使った配役や、メインテーマの教授による感動的なメロディーが心を打つ、重厚で考えさせられる作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2021/07/07 キネカ大森

監督大島渚 
脚本大島渚 
ポール・マイヤーズバーグ 
原作ローレンス・ヴァン・デル・ポスト 
製作ジェレミー・トーマス 
出演デイヴィッド・ボウイ 
坂本龍一 
ビートたけし 
トム・コンティ 
ジャック・トンプソン 
内田裕也 
三上寛 
ジョニー大倉 
室田日出男 
戸浦六宏 
金田龍之介 
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