●こんなお話
狂言誘拐を計画したらどんどん泥沼にはまっていく話。
●感想
中年の男性が知らない二人の男性に妻の誘拐を依頼するところから物語が始まります。しかし、仲介役の人物との連携が噛み合わない。
主人公である中年男性は車のディーラーとして働いており、仕事で期限内に書類を郵送しなければ契約が終わってしまうため、焦りを抱えています。一方、誘拐犯の二人組もあまり仲が良いわけではなく、不穏な雰囲気が漂います。彼らは主人公の家に向かい、そこで妻を誘拐しますが、その途中、職務質問をした警察官を射殺し、さらに道で出会った若者二人を追いかけて殺害する。
事件が発覚すると、地元の警察署長に連絡が入り、日常の朝食風景から出勤する様子まで丁寧に描写されます。足跡や死体の状況から推理を進め、通話履歴の調査や犯人の乗っていた車両の捜索、さらに仲介人への聴取を行いながら事件の糸口を掴んでいきます。
犯人側から身代金の増額要求があり、やむなく主人公側は支払いを決意します。しかし、義父が身代金受け渡し場所へ向かった際に犯人に射殺されてしまうという悲劇も起こります。その後、犯人たちは身代金を持ち帰るものの、誘拐した妻が殺害されていたことに気づき、どちらの車に乗るかで揉めた結果、互いに殺し合う事態となります。
やがて警察署長がパトロール中に盗難車を発見し、捜査を進めると、犯人が殺害した仲間の遺体を粉砕機で処分している場面を押さえ、逮捕に至ります。物語は、主人公が妻といつも通り寝室で過ごし、旦那さんの絵が切手に採用されたというささやかな会話を交わすシーンで締めくくり。
登場人物たちはどこかのんびりとした雰囲気が漂い、計画性に欠ける突発的な行動や殺人が次々と起こる中、淡々と人が死んでいく様子を観るという独特の体験を味わえます。女性警察官が食べ物を口にしながら地道に捜査を進める姿は非常に魅力的で好感が持てるキャラクターでした。また、チンピラの二人組も決してプロフェッショナルとは言えず、ただ無計画に殺人を重ねてしまう滑稽な一面が笑いを誘います。
誘拐シーンにおける恐怖とユーモアの絶妙なバランスは監督らしい笑いのセンスを感じさせ、とても良かったです。暴力的なシーンも含めて、作品全体が一定のテンションを保ちながら淡々と進行するため、人によっては退屈に感じるかもしれません。しかし、その雪の冷たく静かな空気感こそが本作の最大の魅力であり、独特の雰囲気を楽しめる映画となっております。
☆☆☆☆
鑑賞日:2011/03/12 Blu-ray 2024/09/22 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ジョエル・コーエン |
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脚本 | ジョエル・コーエン |
イーサン・コーエン |
出演 | フランシス・マクドーマンド |
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スティーヴ・ブシェーミ | |
ウィリアム・H・メイシー | |
ピーター・ストーメア | |
ハーヴ・プレスネル | |
ジョン・キャロル・リンチ | |
クリスティン・ルドリュード | |
トニー・デンマン | |
スティーヴ・パーク |