映画【回路】感想(ネタバレ):ネットが繋がる先は死の世界?終末系Jホラーの傑作

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●こんなお話

 インターネットから恐怖体験が広がっていく話。

●感想

 物語は、主人公の同僚と急に連絡が取れなくなったことから始まる。不審に思った主人公が彼の自宅を訪ねると、本人は普通に生活しているように見えるのですが、その直後に彼は突如、首を吊って自殺してしまいます。同僚の部屋にあったフロッピーディスクには、彼自身のような姿が写る不気味な画像が保存されており、何かただならぬ気配を感じさせます。

 一方で、大学生のもう一人の主人公は、当時としてはまだ珍しかったインターネットへの接続に挑戦していて、なかなかうまくいかずに苦戦する。そんな中、偶然つながってしまった謎のウェブサイトにより、彼の周囲にも異変が起き始めます。大学のパソコンルームでは、パソコンに詳しい学生から「怪しい画面が出たらプリントスクリーンで記録しておくと良い」というアドバイスをもらう場面も。

 社会人の主人公の職場では、赤いガムテープで封じられた「開かずの間」を発見し、そこに足を踏み入れた同僚が影のような存在に襲われる。一方、大学生側でも、ネットから幽霊が現実に干渉してくるという不可解な事態が起きており、徐々に世界の異変が広がっていくのが分かります。社会人の主人公の周囲でも、影に襲われた人が奇妙な様子で職場に現れた後、突然消えてしまうなど、現実との境界が崩れていく描写が印象的でした。

 物語が進むにつれ、大学生の周囲からは人がどんどん消えていき、コンビニやゲームセンターといった日常の場にも誰もいなくなっていきます。パソコンに詳しかった学生とも連絡が取れなくなり、彼を探しているうちに、同じく人を探していた社会人の主人公と出会い、2人で行動を共にすることに。やっと見つけた学生も目の前で拳銃自殺してしまい、絶望的な状況が深まっていきます。

 クライマックスでは、大学生が「開かずの間」に入り、ついに幽霊と接触する場面へ。その幽霊は実体を持っており、触れることができるという驚きの展開に。やがて人類は滅亡の危機に直面し、生き残った少数の人々だけが船に乗って、新たな希望を求めて旅立ちでおしまい。

 序盤の、ネットを通じて次第に人の精神がおかしくなり、自殺へと追い込まれていく描写は非常に恐ろしく、特に死んだ友人の家にふらふらと現れる影が、無音でじりじりと近づいてくる演出は最高に怖いシーンのひとつでした。終盤に出てくる、実体を持った男性の幽霊も強烈な印象を残します。

 ただし、武田真治さん演じるキャラクターが「幽霊の世界と現実世界の関係」をセリフで長々と説明する場面は、テンポが落ちてしまい少し退屈に感じられました。また、リアリティの部分で違和感があるシーンも散見され、例えば一人暮らしの男性の家の鍵が鉢植えに隠してある設定や、不法侵入なのに平然と声をかける行動など、現実離れした描写がやや気になりました。

 大学生が「何もできない」と言っていたわりに、車をすぐに直してしまうなどの唐突な展開も、やや不自然に感じます。終末的な展開が急激に進行し、説明がほとんどないまま世界が壊れていくため、ストーリーについていけなくなる部分もありましたが、全体としては120分間、飽きることなく観られる作品でした。特にホラーとしての演出力や視覚的な不気味さは、一見の価値があるとは思える1作でした。

☆☆☆

鑑賞日:2011/03/22 DVD 2024/06/23 Hulu

監督黒沢清 
脚本黒沢清 
出演加藤晴彦 
麻生久美子 
小雪 
有坂来瞳 
松尾政寿 
武田真治 
風吹ジュン 
役所広司 
哀川翔 
菅田俊 
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