映画【きけ、わだつみの声 Last Friends】感想(ネタバレ):戦争のリアルと虚構の間を描くタイムスリップ戦争映画

Kike wadatsumi no koe Last Friends
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●こんなお話

 現代のラグビー部の大学生が太平洋戦争中にタイムスリップして戦場を体験する話。

●感想

 いきなり現代のラグビー場から戦時中にタイムスリップするというオープニングにはびっくりで。この始まり方で本当に大丈夫か?と少し不安になるツカミでした。

 南方戦線での主人公たちは、特に戦闘に参加するわけでもなく、流れ着いた先が野戦病院という場所。そこに別の部隊の日本兵たちがやってきて、悪さをし始める。でも、主人公たちはそれを止める側として描かれていて、全体的にどこか外野から戦争を見ているような視点になってしまっていた印象が強かったです。

 レイプや虐殺をしようとする兵士が出てくる一方で、それを止めるのが主人公たちという構図。正義の象徴として描かれていますが、戦争という状況を考えると、誰もが加害者にも被害者にもなりうるはずで、「この人たちは人格者です」と一方的に描いてしまうのは、ちょっと都合がよすぎる気と感じてしまったり。もっと人間の残酷さと善性の両方を持ち合わせた人物が出てきてほしかったです。

 それに、さっきまで元気に見えていた登場人物が、次の場面ではあっさり飢えで倒れていたり、特攻隊のシーンも急に飛び立ってしまったりして、それぞれのエピソードが早送りみたいに感じてしまう感じでした。2時間で全部描こうとした結果、一つひとつのパートが浅くなってしまった印象で、もっと丁寧に描いてほしかったです。

 緒方直人さん演じる逃亡する学生のパートは特に意味がつかめず、場所も時間もポンポン飛ぶから観ていて混乱しました。最初と最後に出てくるけど、何を描きたかったのかよくわからなかったです。

 ただ、負傷兵を見捨てて逃げる描写や、飢餓の果てに人肉を口にするというシーンなど、戦争の悲惨さを直視させる映像は強烈でした。ショッキングな場面が多くて、観ていて胸が締めつけられる感覚になったのは間違いない1作でした。

 戦争映画としての重さやテーマは確かに感じられますが、構成やキャラクターの描き方にはもう少し深みがほしかったというのが正直な感想でした。

☆☆☆

鑑賞日:2011/08/22 DVD

監督出目昌伸 
脚本早坂暁 
出演織田裕二 
風間トオル 
仲村トオル 
緒形直人 
鶴田真由 
的場浩司 
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