●こんなお話
深夜の地下鉄で殺人鬼が暴れる話。
●感想
物語は、地下鉄内でハンマーを持った大男が乗客を次々と襲撃するという事件を軸に進みます。主人公は偶然、街で暴行されそうになっていた女性を助けるのですが、後にその女性が殺害されていたと知り、事件に疑念を抱くように。そして、街中で不審な男を見かけ、彼こそが地下鉄の連続殺人犯ではないかと確信。尾行の末、その男が精肉工場で働いていることを突き止める。
主人公は恋人に事件の真相を話そうとしますが信じてもらえず、孤独の中、調査を続けます。やがて地下鉄で実際に殺害現場を目撃して、ハンマー男に襲われて意識を失うものの、なぜか命を奪われることなく解放されます。この不可解な出来事をきっかけに、彼の精神は次第に変化していき、写真展の開催と事件現場への執着の狭間で揺れ動きます。
物語後半、恋人が失踪した友人を探して地下鉄へと向かってしまい、それに気づいた主人公も彼女を追って再び地下の世界へ。そこには無残な死体が並ぶ異常な空間が広がっており、ハンマー男との壮絶な戦闘へと突入。なんとか彼を倒すものの、地下鉄の運転士が登場し、この世界には人間界とは異なる“もう一つの世界”が存在し、そこにいる怪物たちに人間の死体を提供する「役目」を担っていたと語られます。そして主人公は、その使命を引き継ぐ“2代目ハンマー男”として生きることになっておしまい。
本作の最大の特徴は、痛みと衝撃を直接視覚化する過激な映像表現だと思います。ハンマーで殴られた瞬間に目玉が飛び出し、その目玉に足を取られて転倒するといったグロテスクかつ印象的なシーン、さらには爪をはがす、歯を抜くといった拷問描写も多く、緊張感は終始途切れませんでした。
また、都市の風景を切り取るというカメラマンの視点を巧みに使いながら、次第に地下鉄という異質な空間に物語が引き込まれていく構成は、ホラーでありながらサスペンスや心理スリラー的要素も感じられる演出となっています。
ただ、物語中盤以降、主人公の性格が急変し、憑依されたかのように狂気を帯びていく様子に対する説明がやや曖昧で、見ていて置き去りにされてしまう印象を受ける展開も見受けられました。彼がなぜ殺されずに解放されたのか、また急に格闘能力を身につけていた点など、もう少し説得力のある描写があれば、より没入感が高まったように思います。
とはいえ、狭い車両内で展開されるアクションや恐怖演出は、非常にテンションが高く、映像面では緊迫感と臨場感にあふれていて、電車という日常的な空間が極限の恐怖に塗り替えられていく過程には、観る者の心を引き込む力がありました。
☆☆☆
鑑賞日:2011/03/21 DVD 2024/08/15 U-NEXT
監督 | 北村龍平 |
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脚本 | ジェフ・ブーラー |
原作 | クライヴ・バーカー |
出演 | ブラッドリー・クーパー |
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レスリー・ビブ | |
ブルック・シールズ | |
ヴィニー・ジョーンズ |