●こんなお話
ロサンゼルスの刑事さんが上司とかと癒着した麻薬組織を追いかける話。
●感想
本作は、いわゆる殺人課の刑事ではなく、売春や風俗関連の犯罪を取り締まる「風紀課」に所属する刑事2人が主人公です。彼らはまるで刑事らしさを感じさせない風貌で、特にひげをたくわえ、スタジャン姿の一人は、まるで通行人のような風貌。それにもかかわらず、どこか疲れた雰囲気を漂わせつつも、粘り強く地道な捜査でターゲットを逃しません。そのスタイルに、思わず「カッコよすぎる」と唸らされてしまいます。
物語は、彼らが売春絡みの事件を捜査するうちに、やがて裏社会の大物にたどり着き、追い詰めていく展開です。当然のように警察内部の上層部にも繋がりのある相手で、妨害も受けつつ、意地と執念で食らいついていく姿勢が見応え。
この作品最大の魅力は、やはりこの刑事コンビのキャラクターとやり取りで。まるで漫才のような掛け合いは、冒頭の歯医者のシーンからすでに爆笑でした。情けなさとカッコよさを同居させた、非常に魅力的なバディです。
激しいアクションに巻き込まれてボコボコにされながらも、彼らは裏社会のボスに執念を燃やし、ボスの周囲を1つずつ潰して着実に追い込んでいきます。普段は軽口を叩きあい、飄々とした空気を漂わせているものの、いざとなれば鬼気迫る追跡を見せるギャップが非常に効果的です。
アクションシーンの演出も圧巻で、中盤の追跡劇からスーパーマーケット内での銃撃戦は、カメラワークの躍動感が非常に印象的です。まるでカメラが生き物のように空間を駆け抜け、階段を転げながら敵を追い詰める主人公の姿など、まさに「こんな刑事は見たことがない」と思わされました。
クライマックスでは救急車を使ったカーチェイスが展開され、その地を這うような低い視点で撮影された疾走感には、思わず「カメラ、地面に当たってしまうのでは?」と心配になるほど。物理的なスリルと映像美の両立がなされており、非常に見応えがありました。
そして終盤、ボスをついに追い詰めた主人公が銃口を向けますが、ボスは「俺を捕まえても1年くらいで出てこれる」と余裕の態度。そのまま物語は幕を下ろします。スタッフロール中に、主人公が刑事を辞めていたことが明かされ、司法制度に対する虚しさや現実への嫌気が滲み出るラストが印象的でした。単純な勧善懲悪では終わらない、どこかやるせなさを残した余韻のある結末が、本作に深みを加えています。
☆☆☆☆
鑑賞日:2013/04/05 DVD
監督 | ピーター・ハイアムズ |
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脚本 | ピーター・ハイアムズ |
出演 | エリオット・グールド |
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ロバート・ブレーク | |
アレン・ガーフィールド | |
アントニオ・ファーガス | |
マイケル・ラーナー |