●こんなお話
レイプされた映像を8ミリで撮影されてしまって、大変なことになる話。
●感想
学生たちが無理やり女性を犯していく姿を、無音で淡々と映し出すブルーフィルム。そのフィルムに映るひとりの女性に、主人公は目を奪われてしまう。声も名前も知らないまま、スクリーン越しに恋をしてしまうその導入が、虚構なのか現実なのか曖昧な境界線を漂わせていく。
やがて、その女性と偶然出会う。ラブホテルの受付で働いていた彼女と、なぜか言葉を交わす機会が訪れ、自然とふたりはデートの約束を取り交わすことになる。電話でラブホテルを予約した主人公が、その声に何かを感じて現地に急ぐ場面では、どうして彼女の存在に気づいたのかは曖昧なまま。ブルーフィルムは無音で進行していたはずなのに、声で認識できたのかという部分は、観ていて少し不思議な印象を受けました。
退屈な日常と繰り返される無味乾燥な仕事の中に突然現れた女性。その美しさと儚さ、そしてどこか運命めいたものを背負った彼女に、主人公は次第に心を傾けていきます。ところが、次に会うはずだった約束の日、主人公はかつてのトラブルが原因で警察に引き留められてしまい、デートの時間に遅れてしまいます。土砂降りの中、待ち続ける彼女の姿が挿入される場面はとても切なく、もう取り戻せない時間が静かに積もっていくようでした。
そして、再会するまでの3年間。主人公は家庭を持ち、子どもも生まれている。その一方で、ヒロインは自分が映ったフィルムを観た男たちと体を重ねるようになっていて、すでにその中に心はなかったのかもしれません。主人公にも再び声をかけ、当たり前のように寝ようとする姿に、かつての面影がかすんで見えました。けれども主人公は彼女を抱かない。助け出したい、救いたいという想いがどこかにあったのかもしれません。
ただ、彼女は期待していた。あのときの雨の中、自分を迎えに来てくれるかもしれなかった男が、ようやくまた目の前に現れたと。けれど、その思いが報われることはなく、主人公の小さな躊躇や行動の遅れが、彼女にとっては再び裏切られた瞬間となり、失意のまま見知らぬ男と体を重ねてしまいます。その描写はロマンポルノの枠として仕方ないのかもしれませんが、尺としてやや長く、感情の流れを追うには集中力がやや削がれた印象を受けました。
物語はさらに時間を重ねていきます。偶然のように、再び交差する主人公とヒロインの道。変わっていくものと、変わらないもの。ヒロインは相変わらず男たちに弄ばれるように体を預けて生きている。主人公は彼女を助けたいと願いながら、自身もまたエロ雑誌の編集長という立場で女性たちを商品として扱う立場にあり、現実の残酷さと理想のあいだで板挟みになっていきます。
クライマックスでは、主人公がボコボコにされて倒れ込む中、隣の部屋では乱交が繰り広げられていて、ヒロインは何人もの中年男たちに無表情のまま抱かれ続けています。その光景をどうすることもできずにただ見つめるしかない主人公の姿に、静かな絶望が横たわっていました。
ヒロインと最後に交わす言葉も、どこか届かぬもので、どんなに言葉を尽くしても彼女を救うことはできないという現実が浮かび上がってきます。ヒロインは、もしかすると人生の向こう側に連れて行ってくれるかもしれなかった希望のような存在だったのかもしれません。けれど、何も叶わないまま、主人公は彼女の背中を見送るしかできなかった。
男と女、交わることのなかったふたりの想いがすれ違い続けたまま、静かに余韻を残して物語は終わります。退廃のなかに一筋のロマンと哀しみが交差する、切ないメロドラマとして印象に残る作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2014/08/04 DVD
監督 | 曽根中生 |
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脚本 | 石井隆 |
曽根中生 | |
原作 | 石井隆 |
出演 | 水原ゆう紀 |
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蟹江敬三 | |
あきじゅん | |
水島美奈子 | |
堀礼文 | |
河西健司 |