●こんなお話
怪獣追っかけチームとエコテロリストの戦いの話。
●感想
怪獣という存在と人間との関わりを主軸に、国家の思惑や家族の絆まで描かれていく物語。舞台は、怪獣の存在を把握し研究を進めていた秘密組織「モナーク」。その組織が軍の管轄下に置かれるか否かという議論が進む中、怪獣を操ることができるという装置が、過激な思想をもつテロリストの手に渡ってしまう。
主人公たちは装置奪還のために行動を開始するが、そこで意外な事実が発覚する。人質として捕らえられていたはずの主人公の妻が、ギドラ復活に関わっていた。かつて空想の存在だった三つ首の怪獣・ギドラは、装置によって蘇り、まもなく人類を攻撃対象として猛威を振るい始める。
人間の手には負えない状況のなか、ゴジラが再び姿を現す。ギドラと激しくぶつかり合うが、人類が放った兵器オキシジェン・デストロイヤーによって、ゴジラ自身も深刻なダメージを負ってしまう。
ギドラは宇宙から来た生物で地球の偽の王だということが神話からわかって、その後、ゴジラは深海の古代文明が眠るような場所に身を潜め、回復のときを待つ。そこへ博士が単身赴き、自らの命と引き換えに核爆弾を用いてゴジラを覚醒させる。命がけの決断と、その犠牲によって、再びゴジラが立ち上がる。
物語にはゴジラとギドラだけでなく、モスラやラドンも登場し、それぞれの怪獣の関係性やパワーバランスが目まぐるしく変化していく様子が描かれる。怪獣同士の戦いだけでなく、怪獣を操る装置を巡って主人公の娘が奔走する展開など、家族の葛藤も盛り込まれ、単なるバトル映画以上の広がりを見せていく。
クライマックスでは、ボストンの街を舞台に、赤く進化したゴジラとギドラが最後の戦いを繰り広げる。モスラが犠牲になりながらも援護に入り、ついにはゴジラがギドラを打ち倒す。踏み潰すようにして終止符を打つ姿は、まさに怪獣王でおしまい。
高精細なCGによって表現されるゴジラやギドラ、モスラといった日本の怪獣たちは、どれも存在感があり、ハリウッド資本の力を存分に活かしたスケールの大きさが映像から伝わってきました。街が吹き飛び、大地が割れるほどの怪獣バトルは見応えがあり、怪獣ファンとしては胸が高鳴る場面も多かったです。
ただ一方で、全編を通して暗い画調の場面が多く、南極やボストンでの戦いも、どこか判別しづらい照明の中で繰り広げられていたため、視覚的に疲れてしまう瞬間もありました。戦いのたびにピンチを迎え、そこからの逆転を繰り返す展開もやや単調に感じられ、もう少し緩急が欲しくなるところもあったように思います。
物語上ではモナークという組織が重要な役割を担うようでありながら、実際には起こった出来事の解説役に終始してしまい、機能していない印象も受けました。主人公たちの家族ドラマも、怪獣たちの巨大なスケールの中でやや浮いてしまっていたように感じられ、説得力に欠ける場面も散見されました。怪獣によって数多くの人命が奪われている中で、特定の家族を中心に物語が動いていく流れに、少し戸惑いもありました。
サリー・ホーキンスのキャラクターが唐突に命を落とすなど、重要な登場人物が感情移入する前に退場してしまう演出も多く、人物描写にもう少し厚みがあると良かったと感じました。また、怪獣操作装置があまりにも万能な存在として描かれていたため、リアリティのバランスが崩れてしまっていたのはもったいなかったです。
それでも、伊福部昭の音楽が劇中で鳴り響くたびに気持ちが高まり、エンドクレジットで中島春雄の姿が映し出されたときには、やはりゴジラという存在がいかに長く愛されてきたかを改めて感じさせてくれる瞬間になりました。日本の怪獣文化に対するリスペクトが随所に散りばめられていたのが、シリーズファンとして何よりもうれしかったです。
☆☆☆
観賞日:2019/06/02 TOHOシネマズ川崎 2020/01/03 Blu-ray 2024/05/07 Amazonプライム・ビデオ 2025/07/02 Amazonプライム・ビデオ
監督 | マイケル・ドハティ |
---|---|
脚本 | マイケル・ドハティ |
ザック・シールズ |
出演 | カイル・チャンドラー |
---|---|
ヴェラ・ファーミガ | |
ミリー・ボビー・ブラウン | |
サリー・ホーキンス | |
渡辺謙 | |
チャン・ツィイー | |
チャールズ・ダンス |
コメント