●こんなお話
ブラジルの犯罪組織のボスが日本で拳銃の密売してるけど、ヤクザの抗争に巻き込まれて銃撃戦していく話。
●感想
ブラジルで警官を殺害し、日本に逃げてきたカルロス。映画は、拳銃を売ったのに代金を払わず、しかも横柄な態度を見せたヤクザをカルロスがためらいなく射殺するシーンから始まる。この幕開けによって、組織同士の誤解と抗争が一気に燃え広がっていく。
撃たれたヤクザの組は、敵対組織の仕業と勘違いし、組長が跡目を継ぐ条件として「相手を討ち取ること」が課せられる。子分たちはそれぞれ殺し屋を雇い、抗争はさらに激化していく。カルロスもその一人として雇われ、裏社会の抗争に巻き込まれていくことになる。アメリカ人殺し屋を雇った子分が敵組織の跡目を討ち取る。さらにカルロスを雇った別の子分がその跡目を狙わせる陰謀を企て、草野球帰りの相手を襲撃。カルロスは容疑をかけられて命を狙われながらも必死に逃げ延びる。
印象的だったのは、敵役のアメリカ人殺し屋の登場シーン。紙の的に銃弾を撃ち込んでいる元自衛隊員の殺し屋に近づき、拳銃を借りたかと思うと、いきなり彼を撃ち殺す。そして静かに「紙の的を穴にしてもしょうがないわな」と呟く。その冷徹さとカメラワークの冴えは強烈なインパクトを残しました。
また、カルロスと弟が親戚のおばの住む団地を訪ねる場面も忘れがたかったです。延々と続く廊下をワンカットで見せる演出が最初はユーモラスにも映りますが、再登場時には同じ廊下が一転して恐怖の舞台に変貌。殺し屋に追われ、逃げ惑うスリルを生むこの演出は、空間の使い方の巧みさを感じさせました。
物語が進むにつれてカルロスは裏切られ、雇い主のヤクザからも命を狙われる。弟や親族までもが犠牲になり、抗争は血の連鎖へと突き進む。序盤では気だるげで、訛り交じりの軽口を叩きながら人を殺す危うい存在だったカルロスが、後半には感情を削ぎ落とした殺人マシンのように変わっていきます。
そして迎えるクライマックス。カルロスとアメリカ人殺し屋の一騎打ちは迫力に満ち、映像的にも非常に緊張感が高かったです。目を閉じ、沈黙の時間が訪れた後に一瞬で撃ち合いが展開する場面は息を呑む見せ場となっていました。最後はヤクザの本部へ単身乗り込み、組長を討ち取るも警官隊に囲まれる結末。
スタイリッシュで刺激的な銃撃戦と、個性的でクセのある登場人物たちが織りなす濃密なドラマ。ハードボイルドな緊張感を最後まで楽しませてくれるアクション映画でした。
☆☆☆☆☆
鑑賞日:2014/11/12 DVD 2025/10/04 DVD
監督 | きうちかずひろ |
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脚本 | 木内一雅 |
原作 | きうちかずひろ |
出演 | 竹中直人 |
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チャック・ウィルソン | |
春川ますみ | |
寺尾友美 | |
大木実 |