映画【3月のライオン 後編】感想(ネタバレ):将棋から広がる人間ドラマの行方

March Comes in Like a Lion 2
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●こんなお話

 お世話になっている娘さんたちにいじめ問題や家を出てったお父さんが戻ってきたりして主人公がうじうじ悩む話。

●感想

 物語はもはや将棋とは関係ない方向へと進み、後編では主人公の周囲の人間関係を中心に話が展開していく。なかでも姉妹のひとりが学校でいじめに遭っており、その悩みを打ち明ける場面が長く続き、主人公もその相談に耳を傾けながら、自分に何ができるのか葛藤する様子が描かれる。そして唐突に戻ってきた父親が娘たちを守ろうと敵意むき出しになるなど、どこか別のドラマが始まったかのような錯覚すら覚えます。

 映画の構成としては、連続ドラマの中盤の1話を切り取って長編に仕立てたような印象があり、これまで登場機会の少なかった姉妹の通う学校が舞台となる。しかも、いじめの様子が主人公のナレーションによって語られていく演出が取られていて、急に物語の軸がずれていく感覚に戸惑いを覚える構成だったように感じました。

 お父さんとの確執がメインの親子ドラマも挿入されるが、主人公が介入して何かを変えるわけでもなく、むしろ途中で追い返される展開になっていて、結局は娘たちの力で解決してしまう。また、いじめの問題も主人公が解決に関与することなく、教師の限界が爆発して大問題に発展してしまうという流れで、観ている側としては一体どの視点で物語を受け取ればよいのかが見えにくい構造になっていたように思います。

 また、将棋パートについても、伊藤英明さん演じるライバルの妻の死や、加瀬亮さんが耳の不調を抱えているという描写が差し込まれるのだが、これらの要素が物語の本筋に深く関わってくるわけではなく、断片的に紹介されて終わってしまう。キャラクターの背景を描いているようで、ストーリーにはあまり影響を与えず、そのバランスがやや曖昧に感じられました。

 将棋の強さを獲得していく過程についても、論理的な成長の描写よりも雰囲気で「強くなった」ように見せている印象が強く、ドラマとしての面白さや説得力を求めると物足りなさが残ってしまいます。全体を通して、何を中心に描きたいのかがややぼやけており、将棋映画というよりも、群像劇を寄せ集めたような印象になっていました。

 とはいえ、個々の登場人物に対する細かい描写や、家族や人間関係の中で生まれる感情の機微は丁寧に描かれていて、ひとつひとつのエピソードには俳優陣の熱演がありました。映画としての軸を明確にするか、もっと群像劇として突き抜けるか、どちらかに振り切ると違った印象になったかもしれません。

鑑賞日: 2018/01/12 Blu-ray

監督大友啓史 
脚本岩下悠子 
渡部亮平 
大友啓史 
原作羽海野チカ
出演神木隆之介 
有村架純 
倉科カナ 
染谷将太 
清原果耶 
佐々木蔵之介 
加瀬亮 
前田吟 
高橋一生 
岩松了 
斉木しげる 
中村倫也 
伊藤英明 
豊川悦司 
伊勢谷友介 

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