映画【警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件】感想(ネタバレ):ルーシー・ブラックマン事件を追う捜査官たちの執念と葛藤を描く

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●こんなお話

 イギリス人女性が捜査して容疑者をあぶりだして逮捕した刑事たちのドキュメンタリー

●感想

 1人のイギリス人女性が日本で失踪し、警察が本格的な捜査を開始する。しかし、なかなか手がかりが得られず、進展しない捜査に業を煮やした被害者の両親が来日。マスコミをうまく使って警察批判を展開し、その影響で警察との関係もぎくしゃくしていく。

 そんな中、本筋の捜査とは別に動いていて、ややはみ出し者気味のチームが、ある制服警官の取っていた些細なメモから重要な情報を見つけ出す。携帯電話の通話発信地点を線で結び、その交点にある高級マンションへ向かったことをきっかけに、怪しげな会社やマリーナなど、点と点が次第に線になっていく捜査の流れが見事でした。

 女性警官たちの活躍も目立ち、語学に堪能な警官がホステスたちへの聞き取りを行い、性犯罪の特別チームも立ち上がる。何百人もの被害者に話を聞いて回る中、過去のことだと諦めかけている人たちを丁寧に説得していく様子も心に残りました。意識のない被害者が撮影されていたビデオ映像を見て、刑事たちが強く怒り、深く傷つくシーンは胸が痛くなります。薬で人を無力化し、まるで人形のように扱う卑劣な犯行に、捜査官たちが「日本最大級の性犯罪だ」と憤る姿も印象的でした。

 科学捜査官が映像を分析しながら使用された薬を推測するシーンもリアルで、地道な捜査の積み重ねが際立ちます。裕福な容疑者は終始、ルーシー・ブラックマンさんとの関与を否定し続け、自白もない中で、遺体捜索がわずか7日間という期限つきで進められることに。ラスト7日目、ある刑事が発見した洞窟でバスタブと砂を掘り返したところに、肉食の虫が…。そして死臭に集まってきたトンビを見た刑事の話は、強く印象に残ります。

 刑事たちが「自分も親だから、両親の気持ちを思うと…」と涙を流す姿には、観ている側も思わず胸を打たれます。そしてルーシー・ブラックマンさんの事件については無罪という判決に至った現実が、刑事たちの悔しさと共に観る側の心にも深く刺さるものでした。日本の司法制度への疑問も自然と湧いてくる、重厚な1本だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2023/07/28 NETFLIX

監督山本兵衛
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